ユベルティーヌ・オークレール

ユベルティーヌ・オークレール：フランス・フェミニズムの先駆者

ユベルティーヌ・オークレール（1848年4月10日 - 1914年4月8日）は、フランスのジャーナリスト、作家、そして初期のフェミニストとして知られています。彼女は、第一波フェミニズムの時代に女性参政権運動の旗手として活躍し、自ら『女性市民』という新聞を創刊しました。また、「フェミニズム」という言葉を肯定的な意味合いで使用した最初の人物の一人としても記憶されています。

オークレールはしばしば「フランスのサフラジェット」と呼ばれますが、イギリスの女性が参政権を獲得したのは1918年であるのに対し、フランスでは1944年と、26年も後のことでした。

生い立ちと背景

1848年、ユベルティーヌ・オークレールは、フランス中部の裕福な自作農の家庭に生まれました。父は村長を務めていましたが、ルイ・ナポレオンが皇帝に即位した際に、その共和主義的な信念から解任されました。彼女の母は、当時の偏見にも関わらず、未婚の母を支援する活動を行うなど、進歩的な考えの持ち主でした。

幼くして両親を亡くしたオークレールは、兄によって修道院に送られます。彼女はイエス・キリストを「革命家」として敬愛していましたが、修道院長らは彼女のキリスト教観に驚き、受け入れを拒否しました。幼い頃から恵まれない人々への深い共感を示し、貧しい家庭では手に入らないジャムを食べることを拒んだこともありました。こうした経験が、後の女性解放運動の根底にある、最も弱い立場の人々への共感へと繋がっていきます。

父親の遺産を受け継ぎ経済的に自立すると、その大半を恵まれない女性たちの支援に充てました。1870年に普仏戦争が勃発すると、兵士の境遇改善のために資金集めに奔走し、天然痘患者の介護にも献身的にあたりました。

女性の権利を求めて

1869年、女性解放運動家のレオン・リシェとマリア・ドレームが創刊した『女性の権利』紙に感銘を受け、オークレールは女性の権利運動に身を投じます。ヴィクトル・ユーゴーが同紙に寄せた書簡は、彼女の方向性を決定づけました。当時のナポレオン法典では、既婚女性は未成年者と同様の扱いを受けていましたが、ユーゴーは「法によって未成年者と呼ばれる者は、実際には奴隷である」と指摘していたからです。

オークレールは1876年、複数の新聞に記事を掲載し、「女性は二月革命を起こした労働者や農民と同じように、自らの権利を要求するべきである」と訴えました。彼女は、支配者である男性が自ら進んで「特権」を放棄するなどという甘い考えは捨て、女性自身が闘わなければならないと主張しました。

国際的な活動と『女性市民』紙

オークレールは、国際女性連盟が主催する国際女性の権利会議にも積極的に参加しました。しかし、彼女が最も重要だと考えていた参政権の問題は、なかなか議題に上がらず、そこで自らパンフレットを作成し、配布することで、女性参政権の必要性を訴えました。

1881年には、フェミニズム新聞『女性市民』を創刊し、女性だけでなく男性にも向け、解放を促す記事を掲載しました。オークレールは社説を本名で、その他の記事をペンネームで執筆し、女性たちに依存からの解放を、男性たちには女性の権利を認めることこそが真の民主主義を築くと説きました。

その後の活動と遺産

弁護士との結婚後、アルジェリアに滞在したオークレールは、アラブ人女性の権利擁護にも取り組みました。帰国後は「貧者の後見人」や「女性の事務局」を設立し、女性たちの支援に尽力しました。

晩年には女性参政権運動に再び力を注ぎ、「女性参政権」協会を結成したり、デモを呼びかけたりするなど、精力的な活動を展開しました。

1914年、オークレールは病気のために活動を中断し、4月8日に65歳で亡くなりました。彼女の功績は、現代のフェミニズム運動にも大きな影響を与えています。

2018年4月、生誕170年を記念して、彼女の故郷に「ユベルティーヌ・オークレール広場」が誕生しました。

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