ユリウス・フチーク (作曲家)

ユリウス・フチーク：行進曲の巨匠、その生涯と作品

ユリウス・アルノシュト・ヴィレーム・フチーク（Julius Arnošt Vilém Fučík）は、1872年6月18日にプラハで生まれ、1916年9月15日に同地で没した、チェコの作曲家であり、軍楽隊の指揮者です。彼は生涯の大部分を軍楽隊の指揮者として過ごし、300曲を超える行進曲、ポルカ、ウィンナ・ワルツを作曲したことで知られています。彼の作品の多くは軍楽隊のために書かれたため、「ボヘミアのスーザ」とも呼ばれることがあります。

生涯

フチークはオーストリア＝ハンガリー二重帝国の支配下にあったボヘミアで生まれました。若い頃から様々な楽器を演奏し、ファゴットやヴァイオリンを使いこなしました。その後、作曲をドヴォルザークに師事しました。

1891年、フチークはオーストリア＝ハンガリー第49歩兵連隊の軍楽隊に入隊し、音楽家としてのキャリアをスタートさせました。当初はクレムスでヨーゼフ・フランツ・ワーグナーの指揮下で演奏しましたが、後にウィーンの軍楽隊に移籍しました。1895年に軍を離れ、プラハのドイツ劇場で第2ファゴット奏者として働き始めました。その後、プラハ市管弦楽団の首席指揮者や、クロアチアのシサク市にあるダニツァ合唱団の指揮者も務めました。この時期には、クラリネットやファゴットのための小品など、室内楽曲も数多く作曲しました。

1897年、サラエヴォの第86歩兵連隊の楽隊指揮者として再び軍隊に入隊し、この時期に彼の最も有名な作品である「剣闘士の入場（Einzug der Gladiatoren）」を作曲しました。この曲は元々「半音階的大行進曲（Grande Marche Chromatique）」というタイトルでしたが、フチークがローマ帝国に興味を持っていたため、タイトルが変更されました。後に、カナダの作曲家・編曲家であるルイ・フィリップ・ローランドーが小編成のバンド向けに編曲し、「サンダー・アンド・ブレイズ（雷鳴と稲光）」というタイトルで出版したところ、サーカスで広く使われるようになり、世界的な人気を得ました。現在でも、世界中のサーカスで道化師の登場シーンに使われており、「スクリーマー」などの愛称でも親しまれています。

フチークの楽隊は1890年にブダペストに転属となり、彼は自身の作品を演奏してくれる楽隊を探しました。その中で、多くのライバルに立ち向かいながらも、より多くの演奏家を起用して管弦楽曲の編曲にも挑戦しました。1909年にフチークは再びボヘミアに戻り、テレジンの第92歩兵連隊の楽隊に入隊しました。当時この楽隊は、オーストリア＝ハンガリー帝国で最も優れた軍楽隊とされていました。フチークは楽団と共にプラハやベルリンで演奏旅行を行い、1万人以上の観客を動員しました。

1913年にベルリンで結婚したフチークは、自身の楽隊と楽譜出版社を設立し、自作の販売を試みました。しかし、第一次世界大戦の勃発により、事業は頓挫し、健康も損なわれました。1916年に急病のためプラハに戻ると、そのまま急逝しました。

主な作品

フチークは生涯で多くの作品を残しましたが、特に有名なのは以下の通りです。

行進曲「剣闘士の入場」（Einzug der Gladiatoren）作品68: サーカス音楽の定番として、世界中で親しまれています。
ワルツ「理想的な夢」（Traum-Ideale）作品69
行進曲「将官旗の下に」（Unter der Admiralsflagge, Marsch）作品82
行進曲「真夜中に」（Um Mitternacht）作品93
行進曲「連隊の子供たち」（Die Regimentskinder）作品169
ワルツ「冬の嵐」（Winterstürme）作品184
おどけたポルカ「小言親父」（Der alte Brummbar）作品210
行進曲「アッティラ」（Attila）作品211
「フローレンス行進曲（フローレンティナー行進曲）」（Florentiner Marsch）作品214
演奏会用序曲「マリナレーラ」（Marinella-Ouvertüre）作品215
行進曲「2人の陽気な村の鍛冶屋」（Die lustigen Dorfschmiede）作品218
ワルツ「バレリーナ」（Ballerinas）作品226
ワルツ「ドナウ伝説（ドナウの歌）」（Donausagen）作品233
行進曲「ヘルツェゴヴィナ」（Hercegovac）作品235
絵画的行進曲「叔父テディ」作品236
演奏会用序曲「ミラマーレ」（Miramare）作品247

外部リンク

ユリウス・フチークの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
（作曲家の生涯について、ドイツ語）
* （作曲家の生涯について、ドイツ語）

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