ユーノス

マツダ ユーノス：栄光と挫折の高級車ブランド物語

1989年、マツダは5チャンネル体制の一環として、高級車ブランド「ユーノス」を設立しました。マツダ、アンフィニ、オートザム、オートラマと並ぶ、個性的なブランドの一つとして、その名を轟かせました。

ユーノスの象徴は、なんといっても世界的なヒット作となったロードスターです。軽快な走りとスタイリッシュなデザインは、多くの自動車愛好家を魅了しました。しかし、ユーノスはロードスター以外にも個性豊かな車種を展開しました。3ローターロータリーエンジンと世界初のGPSナビゲーションシステムを搭載したコスモ、ジウジアーロがデザインを絶賛したユーノス500、4WSとミラーサイクルエンジンを搭載したユーノス800、コンパクトなボディにV6エンジンを搭載したプレッソなど、どれもが他にはない魅力を持っていました。

これらの個性的な車種は、ユーノスというブランドに独特の個性を吹き込みました。しかし、ロードスター以外の車種は商業的な成功を収めることができず、ブランド全体の業績は伸び悩みます。

1996年、マツダの再建計画に伴い、5チャンネル体制は終了。ユーノスはアンフィニと統合され、「マツダアンフィニ」となりました。ロードスターとユーノス800（ミレーニアに改名）だけが生き残り、他の車種は生産中止となりました。ユーノスというブランドは、その歴史に幕を閉じました。

ユーノスは、欧州市場でも「クセドス」ブランドとして、ユーノス500（クセドス6）とユーノス800（クセドス9）を販売していました。ただし、専用ディーラーはなく、既存のマツダ販売網を活用した販売形態でした。香港やオーストラリアにもユーノス店が展開されていた時期もありました。

ユーノスのエンブレムは、十二単の襟をモチーフとしており、ブランド名は「喜びのコレクション」という意味を持つ造語です。このエンブレムとブランド名は、ユーノスの高級志向を象徴するものでした。

幻のプレミアムブランド「アマティ計画」

マツダは、ユーノス以外にも海外市場向けに「アマティ」というプレミアムブランドの展開を計画していました。4.0L V型12気筒エンジンを搭載した「アマティ1000」を中核としたこの計画は、1994年春の北米市場投入を目指していました。シンボルマークも発表されましたが、マツダの経営状況悪化により、計画は白紙となりました。

日本国内では「ユーノス1000」として販売される予定だったアマティ1000の開発も中止され、一部自動車雑誌には最終試作車と思われる写真が掲載されました。北米市場投入予定だったユーノス800は、アマティ500としてではなく、マツダ・ミレーニアとして販売されることとなりました。また、ユーノス・コスモとユーノス500もアマティブランドで販売される予定でした。

独自の販売戦略と異業種参入

ユーノスは、全国統括会社「株式会社ユーノス」を設立し、マツダブランドとは別に独立したブランドとして運営されていました。そのため、広告や営業活動ではマツダの名前は伏せられ、車検証にもユーノスの表記が存在しました。ラインナップの補完として、シトロエン車の輸入販売も行っていました。

店舗展開においては、高級感のある店舗を建設。しかし、近年の統一されたデザインとは異なり、マツダ店やアンフィニ店との複合店舗、ビルやショッピングセンターのテナント、シトロエン車とユーノス車を分離した店舗など、多様な形態が存在しました。「オカジオン」という認定中古車制度と、それに伴う中古車販売店も展開していました。

ディーラー網の拡大においては、異業種資本参入を積極的に進めました。ロードスターの人気もあって、多くの企業がユーノス販売網に参加。ピーク時には148社もの企業が参加していましたが、ユーノスブランドの業績不振により、多くの企業が撤退していきました。

1996年のアンフィニ店統合後、残った店舗はマツダアンフィニ店またはフォード店に転換されました。1998年までシトロエン車の輸入販売権は継続され、旧ユーノス店の一部ではシトロエン車の販売が続けられました。しかし、2001年にシトロエン・ジャポンが発足すると、専売店化が進み、多くの旧ユーノス店はシトロエン車の販売を終了しました。

ユーノスに参加した異業種企業には、JR北海道、JR九州、JR西日本、三越、住友商事、象印マホービンなど、多様な企業が含まれていました。

ユーノスは短命に終わったブランドでしたが、個性的な車種と販売戦略は、自動車史に独特の足跡を残しました。その歴史は、日本の自動車業界における挑戦と革新の物語の一つと言えるでしょう。

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