オートザム

マツダオートザム：地域密着型販売網から販売チャネル一本化へ

1989年、マツダは5つの販売チャネル体制（マツダ、ユーノス、アンフィニ、オートザム、オートラマ）を構築しました。その中で、オートザムは軽自動車や小型車を取り扱うブランドとして誕生しました。ブランド名は、「AUTOMOBILE」と「MAZDA」を組み合わせた造語で、親しみやすい近所のカーショップをイメージしたディーラーコンセプトを掲げていました。

オートザムの特徴は、中小規模の整備工場や中古車販売店を中心とした販売網です。正規ディーラーに加え、「協力店」と呼ばれるサブディーラーも存在し、地域によっては他のマツダブランドとの複合店舗も見られました。ブランド戦略上、マツダの社名は伏せられていましたが、車検証には「マツダ」と記載されていました。

当初のラインナップは軽自動車が中心で、フラッグシップモデルはクレフでした。また、高級車市場への進出を目指し、ランチアの正規輸入販売も行っていました。ランチア・テーマ、ランチア・デルタ、アウトビアンキ・Y10といったイタリア車の販売は、オートザムのブランドイメージ向上に貢献しました。販売網は「株式会社オートザム」と地区卸会社が統括し、大都市圏では直営の高級店「オートザムソシオ」も展開していました。

しかし、オートザムはキャロル以外のヒット作に恵まれず、5チャンネル体制の崩壊後も、ディーラーの撤退が相次ぎました。1998年、マツダはオートザムの再編に着手。一定基準を満たした店舗のみ「マツダオートザム」へ名称変更し、ファミリア、ボンゴ、プレマシーなどの販売権を与えました。軽自動車はスズキからのOEM車に切り替え、独自開発は停止されました。

マツダオートザムに移行できなかった店舗は、軽自動車とデミオのみの取り扱いとなり、AZ-オフロードやラピュタといった新機種はマツダオートザム店と併売されました。その後、新機種の販売にはマツダオートザムへの移行が必須となり、基準を満たせなかった店舗は順次撤退していきました。結果、約900あったオートザム店は、350店ほどのマツダオートザム店へと減少しました。ランチアの輸入販売も1998年に終了しました。2001年には、株式会社オートザムと地区卸会社が合併し、「株式会社マツダオートザム」が設立されました。

その後、アクセラ、MPV、トリビュート、ボンゴフレンディなどの取り扱いを開始し、他チャンネルでもキャロル、スピアーノ、AZ-ワゴン、スクラムの販売が始まり、販売チャネル間の差別化は徐々に縮小していきました。2016年には、アテンザ、ロードスター、ファミリアバン、タイタンといったマツダの最上位車種も取り扱うようになり、マツダオートザム店は国内販売チャネル事実上の一本化を迎えました。これに伴い、「株式会社マツダオートザム」は業務を停止し、販売網の統括はマツダ本体および他の販売チャネルが行うようになりました。現在では、マツダ店やマツダアンフィニ店と同様の「新世代店舗」へのリニューアルが進められています。

オートザム時代の車種には「AZ」の付いた車名が多く、マツダのブランドイメージを隠す戦略がうかがえます。カタログでは、「Autozam's Collection」という名称でラインナップが紹介されていました。オートザムは、地域密着型の販売網から、マツダ販売チャネルの一本化という大きな変化を遂げたブランドと言えるでしょう。

もう一度検索