ユーリ・アファナーシェフ

ユーリー・ニコラエヴィチ・アファナーシェフ氏（1934年9月5日 - 2015年9月14日）は、ソビエト連邦末期からロシア連邦にかけて、歴史学者としてまた政治家として多大な影響力を持った人物です。

彼は1934年9月5日、ウリヤノフスク州に生まれました。学業においては、1957年にモスクワ大学歴史学部を卒業し、その後、1971年と1976年にはパリ大学（ソルボンヌ）に留学して専門分野における見識を深めました。その学識は高く評価され、史学博士号を取得し、教授職にも就きました。また、ロシア科学アカデミーの会員でもありました。

若い頃から、共産主義青年組織であるピオネールやコムソモールで活動し、1954年にはソ連共産党に入党しました。その後は、ソ連科学アカデミー世界史研究所の上級研究員、そして諸外国史文化史部門の責任者を務めるなど、研究者としてのキャリアを積みました。また、ソ連共産党の理論誌『コムニスト』では、編集会議の一員として歴史部門の主筆を務めるなど、党内の重要なポストも歴任しました。

教育界においては、1986年にモスクワ歴史古文書大学の学長に就任しました。さらにその後、現在のロシア国立人文大学の前身にあたるモスクワ人文大学の学長も務め、高等教育の発展と改革にも尽力しました。

ミハイル・ゴルバチョフ書記長（後に大統領）が進めるペレストロイカが始まる中、アファナーシェフ氏は政治の舞台でも活動を始めます。1989年にはモスクワ州選挙区からソ連人民代議員に選出され、その影響力を増しました。彼は、ボリス・エリツィン、アンドレイ・サハロフ博士、ガブリール・ポポフ、アナトリー・サプチャークといった、共産党体制の抜本的な改革を目指す急進改革派の主要メンバーと共に活動しました。特に、「地域間代議員グループ」の結成においては中心的な役割を果たし、その共同議長を務めました。このグループは、当時のソ連における主要な民主化勢力の一つとなりました。

1990年には、市民行動運動やロシア民主党の共同議長を務めるなど、様々な民主化運動や政治勢力に関与し、多角的な角度から改革を推進しました。そして、1991年には、長年にわたり所属してきたソ連共産党を離党し、体制内からの改革ではなく、より自由な立場からの政治活動へと移行しました。

ペレストロイカ期において、アファナーシェフ氏は歴史認識の見直しに関して、極めて大胆かつ真摯な発言を続け、過去のタブーに挑戦しました。彼のこうした言動は、当時のソ連社会に大きな議論を巻き起こし、国民の意識改革を促す上で重要な役割を果たしました。政治家としての急進的な行動と相まって、体制変革の機運を高める上で、彼の存在は不可欠なものでした。

彼の学術研究は非常に広範であり、歴史概論、フランス史、ロシア史といった伝統的な歴史学の領域に加え、政治学や教育原理、教育史（特に新教育制度や教育術）など、多岐にわたるテーマを探求しました。

その長年の功績と貢献に対し、フランス政府からはレジオンドヌール勲章、リトアニアからはリトアニア大公ゲディミナス三世勲章、スウェーデンからは北極星勲章など、国内外から数多くの栄誉ある勲章が授与されました。

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