ユーリー・チェルニチェンコ

ユーリー・ドミートリエヴィチ・チェルニチェンコ（ロシア語: Юрий Дмитриевич Черниченко、1929年8月7日 - 2010年6月14日）は、ソビエト連邦およびその後のロシア連邦において、多岐にわたる分野で活躍した人物です。彼は主に作家、小説家、エッセイストとして知られますが、政治家、社会活動家としても重要な役割を果たしました。

経歴と初期活動

チェルニチェンコは、1953年にキシナウ大学の文献学部を卒業しました。その後、作家としての活動を開始し、1966年にはソ連作家同盟の会員となります。彼は作家活動と並行して、様々なメディアでの仕事にも関わりました。特に、テレビ番組「農村の時間（セリスキー・チャース）」の制作に携わったことはよく知られています。また、『ズナミーヤ』誌や、『アルタイスカヤ・プラウダ』紙、『ソビエツカヤ・ロシア』紙、『プラウダ』といった主要な新聞・雑誌の編集にも深く関与し、言論の世界で地歩を固めました。

農業システムへの批判と政治活動

チェルニチェンコは、ソビエト連邦の農業システムに対し、強い関心と批判的な視点を持っていました。ペレストロイカが進む1989年から1991年にかけて、彼は書籍やテレビといったマスメディアを通じて、ソフホーズ（国営農場）やコルホーズ（集団農場）の非効率性や問題点を鋭く指摘し、ソ連の農業政策に対する改革の必要性を訴えました。この活動は、多くの人々の共感を呼び、彼が単なる作家に留まらない社会的な影響力を持つ人物であることを示しました。


作家としての立場から、チェルニチェンコはペレストロイカを支持しました。1990年には、ペレストロイカを支持する全ロシア作家協会の「四月」という団体の共同議長に就任しています。また、作家同盟内でも重要な役職を歴任し、1986年から1991年までソ連作家同盟委員会の書記および共同議長、ソ連崩壊後の1991年にはロシア作家同盟の書記を務めました。


彼の活動は、文学の枠を超え、直接的な政治へと広がります。1989年から1991年にかけて、ソ連人民代議員に選出され、改革派が集まる地域間代議員グループに参加し、その調整評議会のメンバーにも選ばれるなど、ソ連末期の政治の舞台で活動しました。ソ連崩壊後、ロシア連邦が成立してからも政治への関与は続き、1993年から1995年まで、ロシア連邦議会上院である連邦会議の代議員を務めました。この間、彼は自ら設立したロシア農民党（Крестьянской партии России）の議長を務めるとともに、上院の農業政策委員会に所属し、専門である農業問題に関する政策立案に関わりました。1993年には、当時の政治情勢に対して作家や文化人がエリツィン大統領への支持を表明した公開書簡「42人の手紙」にも参加するなど、激動期のロシア政治において積極的に発言・行動しました。

栄典と晩年

その功績に対し、チェルニチェンコにはいくつかの栄典が与えられています。1966年にはソ連ジャーナリスト同盟賞を受賞。その他、名誉のバッジ勲章や、1993年には自由ロシア擁護メダルなどを受けています。


ユーリー・ドミートリエヴィチ・チェルニチェンコは、長い闘病生活を送った後、2010年6月14日に80歳でその生涯を閉じました。彼の遺体は火葬され、生前の遺志に基づき、クリミア半島の美しい山、カラ＝ダール山に灰がまかれました。彼は、作家として、また時代の変化に積極的に関与した政治家・社会活動家として、ロシアの歴史にその名を刻んでいます。

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