ユー・ノウ・マイ・ネーム

ユー・ノウ・マイ・ネーム：ビートルズの隠れた名曲

1970年3月発売のシングル『レット・イット・ビー』のB面に収録されたビートルズの楽曲、「ユー・ノウ・マイ・ネーム」。その誕生からリリースまでの道のり、そして曲に込められた魅力を紐解きます。

電話帳から生まれたユニークな楽曲

この曲は、ジョン・レノンが電話帳を眺めていた時にひらめいたアイデアから生まれました。電話帳に書かれた「You know my name, look up the number」というフレーズを基に、レノンは独特の歌詞とメロディーを生み出しました。ポール・マッカートニーは、この曲を「すごくおかしな曲」と評しており、レノンの突拍子もない発想と、それを受け止めて作品に昇華させた二人の息が感じられます。楽曲は4つのパートで構成され、独特のコード進行と展開が特徴です。しかしながら、当初はジョークのような軽妙な雰囲気で、発展させることなく完成したとのことです。

多彩なミュージシャンが参加したレコーディング

レコーディングは1967年5月と6月、そして1969年4月に行われました。1967年のセッションには、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズがサックスで参加し、楽曲に独特の風味を加えています。1969年4月30日の最終セッションでは、レノンとマッカートニーがボーカル・トラックを録音。この時、ジョージ・ハリスンとリンゴ・スターは不在でしたが、レノンとマッカートニーは仲たがいしていたにも関わらず、1本のマイクを囲んで一緒に歌ったとのことです。マル・エヴァンズが効果音で参加し、独特のサウンドに貢献しています。レコーディングは2～3年にも及ぶ長期に渡り、断片的に行われたため、完成までには試行錯誤が繰り返されたようです。マッカートニーは、ジャズ風の歌い方やスキャットを取り入れたり、砂を掘るマルの姿を思い起こしたりと、賑やかなセッションの様子を語っています。

波乱万丈のリリース秘話

当初はプラスティック・オノ・バンドのシングルとしてリリースされる予定でした。しかし、ブライアン・ジョーンズの死後、レノンは「ユー・ノウ・マイ・ネーム」を編集し、シングルとして発売を試みました。しかし、発売直前に取りやめとなりました。その後、1970年3月、ビートルズのシングル『レット・イット・ビー』のB面としてようやく世に出ることとなります。しかし、レコードのラベルにはタイトルが誤って記載されていました。イギリス盤では、プラスティック・オノ・バンドのシングルとしてのカタログ番号がわずかに確認できるという、興味深い事実も残されています。その後、アルバム初収録は1978年のボックスセット『ザ・ビートルズ・コレクション』のボーナスディスク、CDでは1988年の『パスト・マスターズ Vol.2』となり、1996年の『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』で拡張版ステレオ・ミックスが収録されるまで、モノラル・ミックスしか存在しませんでした。

曲の構成とクレジット

楽曲は4部構成で、レノンとマッカートニーのツイン・ボーカルが中心です。軽快なリズムと、独特なコード進行、そしてブライアン・ジョーンズのサックスが印象的です。レノンが映画で共演したデニス・オデールが、曲中でナイトクラブの歌手の名前として登場するなど、様々な要素が織り込まれています。

クレジット

ジョン・レノン：リード・ボーカル、バッキング・ボーカル、スポークン・ボーカル、ギター、マラカス、サウンド・エフェクト
ポール・マッカートニー：リード・ボーカル、ピアノ、ベース、ハンドクラップ、サウンド・エフェクト
ジョージ・ハリスン：リードギター、ヴィブラフォン
リンゴ・スター：ドラム、ティンバレス、ボンゴ
ブライアン・ジョーンズ：アルト・サクソフォーン
マル・エヴァンズ：効果音

まとめ

「ユー・ノウ・マイ・ネーム」は、レノンの突拍子もない発想から生まれた、ユニークで魅力的な楽曲です。レコーディング過程やリリースの経緯も波乱に満ちており、ビートルズの音楽史において重要な一曲と言えるでしょう。その軽妙な雰囲気と、意外性のあるサウンドは、今もなお多くのファンを魅了し続けています。

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