ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセン

ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセンの生涯と業績

ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセン（Johannes Vilhelm Jensen）は、1873年1月20日にデンマークのFarsø村で生まれました。彼の父は獣医であり、イェンセンは田舎の環境で育ちました。コペンハーゲン大学では医学を専攻していましたが、学費を稼ぐためにジャーナリストとして働くこととなりました。大学での学びを経て彼は進路を変更し、文学に専念する決意を固めました。

イェンセンの初期の作品は、彼の祖国であるデンマークに根ざしたペシミズムの影響が色濃く見られます。1898年から1910年までの間に出版された短編集『ヒンマーラン短編集』（Himmerland Stories）は、彼の代表作の一つです。この作品を通じて、イェンセンはデンマークの文化や風景を繊細に描写しました。さらに、1900年から1901年にかけて執筆した『王の没落』（Kongens Fald）は、16世紀のデンマーク王クリスチャン2世の物語を描いた歴史小説であり、1999年には20世紀デンマーク最高の小説に選ばれました。

イェンセンはまた、1906年に『詩篇1906』（Digte 1906）を出版し、ここでデンマークに散文詩のスタイルを導入しました。彼の詩は人間性や哲学、進化といったテーマを深く掘り下げ、多岐にわたる内容で知られています。また、戯曲やエッセイも執筆し、これらの作品には彼の独自の視点が反映されています。

旅行好きなイェンセンは、特にアメリカへの旅が印象深いものでした。この旅の中で、彼は詩『Paa Memphis Station』の着想を得て、後にデンマークで広く知られるようになります。また、ウォルト・ホイットマンなどの著名な作家もイェンセンの影響を受けています。

イェンセンは1920年代以降、文学から科学へと関心を移し、生物学と動物学の研究に没頭しました。ダーウィンの理論を基にした倫理体系の構築を試みる中で、古典詩の再生にも寄与しようとしました。しかし、彼の理論や見解はしばしば論争を引き起こし、特に人種に関する発言は彼の評判を傷つける要因となりました。そうした発言に対し、ファシスト的な行動とは一線を画し、彼は文学の枠組みの中での影響力を保持しました。

イェンセンはデンマーク近代詩の父と称されることが多く、彼の直接的な影響は1960年代に広がりました。彼はラドヤード・キップリング、クヌート・ハムスン、カール・サンドバーグと並び称される作家で、その作品は文壇に大きな足跡を残しました。

また、彼は同時代のドイツ人作家ヴィルヘルム・イェンセン（1837-1911）と混同されることがあるため、注意が必要です。このように、ヨハネス・ヴィルヘルム・イェンセンは20世紀デンマーク文学の中で重要な位置を占め続けています。

訳書一覧

• - 『ヒンマーラン短編集』ノーベル賞文学全集2 (主婦の友社、竹内孝次訳、1970年)
• - 『王の没落』 (長島要一訳、岩波文庫、2021年4月)

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