ヨハネス10世 (ローマ教皇)

ヨハネス10世（Ioannes X, 860年頃 - 928年6月）は、10世紀初頭にローマ教皇を務めた人物です。教会慣用名はヨハネ。在位期間は914年3月から928年5月まででした。

生涯

イタリアのトッシニャーノで生まれたヨハネス10世は、教皇に選出される以前はラヴェンナの大司教を務めていました。教皇への選出は914年3月に行われました。しかし、彼が教皇になるまでの経緯については、様々な説があります。

クレモナ司教リウトプランドの記録によれば、ヨハネス10世はラヴェンナ大司教時代から、ローマの有力貴族テオフィラットの妻テオドラと深い関係があったとされています。この関係の真偽は定かではありませんが、教皇就任後もテオフィラットの強い支持を受けていたことは事実です。テオフィラット夫妻は、当時のローマにおいて絶大な影響力を持っていました。

しかし、920年代初めにテオフィラット夫妻が死去すると、ヨハネス10世はイタリア王ウーゴとの関係を深めていきました。この動きが、結果的に彼の運命を大きく変えることになります。テオドラの娘であり、後のローマ教皇ヨハネス11世の母であるマロツィアは、トスカーナ辺境伯グイードと結婚していました。マロツィアとグイードは、ウーゴの勢力拡大を快く思っていませんでした。彼らにとって、ウーゴの勢力が増大することは、自分たちの権威を脅かすものだったからです。

そのため、マロツィア夫妻はヨハネス10世を敵視するようになり、最終的に彼を捕らえ、獄死させるという手段に出ました。ヨハネス10世は928年6月に獄中で命を落としました。彼の死は、当時のローマにおける権力闘争の激しさを物語っています。ヨハネス10世の生涯は、教皇権が世俗の権力闘争に深く巻き込まれていた時代を象徴する出来事と言えるでしょう。

参考文献

小林珍雄『法王庁』岩波書店<岩波新書>、1966年8月。
樺山紘一・木村靖二・窪添慶文・湯川武監修『クロニック世界全史』講談社、1994年11月。ISBN 4-06-206891-5
* Paul Collins, The Birth of the West, PublicAffairs, 2013.

もう一度検索