ヨモツシコメ

ヨモツシコメ（予母都志許売）

ヨモツシコメ（予母都志許売）は、日本神話に登場する黄泉国の怪物または神であり、黄泉の醜女とも呼ばれます。彼女は、特に『古事記』や『日本書紀』に記されており、ストーリーにおいて重要な役割を果たしています。別名には泉津醜女や泉津日狭女があり、神話の中で何度も語られています。

概要

ヨモツシコメは、古代日本の神話において黄泉国を支配する存在として知られています。彼女は、伊耶那岐命が黄泉国から逃れようとする際に、追手として現れます。これは、彼女が伊耶那美命に仕えており、逃げる者を捕らえる役割を担っているためとされています。

古事記におけるヨモツシコメ

『古事記』によると、伊耶那美命は自分との約束を破り、黄泉国から逃げ出した伊耶那岐命を捕まえるためにヨモツシコメを送りました。伊耶那岐命は、追手からの逃亡中に黒御縵（くろみかずら）を投げて、その間に食べ物が生えることで時間を稼ぎ、逃げることができました。しかし、ヨモツシコメはすぐに彼を追いかけ、次に伊耶那岐命が投げた湯津々間櫛（ゆつつまぐし）によってもまた逃げる時間を作ります。このように、食べ物を食べる間に逃げ続けるという展開が、神話の中で描かれています。

日本書紀における記述

一方、『日本書紀』では、伊奘冉尊が伊奘諾尊を追うために泉津醜女を八人遣わせるという物語が描かれています。ここでも、伊奘諾尊は剣を振り回しながら逃げ、黒鬘を投げることで葡萄が生え、追手たちはこれを食べる間に逃げ切ることが描かれています。また湯津爪櫛を使った際にも筍が現れ、その間に伊奘諾尊が逃げるというストーリーが繰り返されます。最終的に、伊奘諾尊は泉津平坂に辿り着くことができました。

ヨモツシコメの考察

ヨモツシコメの名前に含まれる「シコ」という語は、醜さを示す意味がある一方、強さをも表しています。彼女が黄泉国の象徴であるため、死や他界に関連づけられることが多いです。この観点から、ヨモツシコメや同じ意味合いを持つ存在は、死というテーマに深く結びついていると考えられています。

シコメは鬼女と解釈されることもありますが、記紀の記述にはそのような表現は見られず、性別の明記は仏典の特徴であるため、醜女の概念は仏教説話や現代の鬼とは異なる次元で考えられるべきだという意見も存在します。

参考文献

• - 有村偰著『「予母都志許売」論─「シコ」の意義─』
• - 倉野憲司校注 『古事記』
• - 坂本太郎、家永三郎校注 『日本書紀』

ヨモツシコメは、日本の神話において黄泉国との関連を持つ重要な神格であり、その存在は死と再生、そして人間の存在に関する深い考察を提供しています。

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