ヨランド・ド・エノー

ヨランド・ド・エノー（またはヨランド・ド・フランドル）は、1175年に生まれ、1219年8月に亡くなった、中世ヨーロッパの貴族女性です。彼女は、エノー伯ボードゥアン5世とフランドル女伯マルグリット1世の娘として生まれました。彼女の兄弟には、ラテン帝国の皇帝となったボードゥアン1世とアンリ1世がいます。

1212年、ヨランドは弟フィリップ1世からナミュール侯位を継承しました。この頃の彼女は、領主としての地位を確立しつつありました。1216年、弟のラテン皇帝アンリ1世が死去し、後継者としてヨランドの夫ピエール2世・ド・クルトネーが選ばれました。しかし、ピエールはコンスタンティノープルへ向かう途中でエピロス専制侯国との戦いに巻き込まれ、捕らえられてしまいます。

夫が不在となったため、ヨランドはラテン帝国の摂政として統治を担うことになりました。彼女は、政治手腕を発揮し、ビザンツ帝国の後継国家に対抗するため、ブルガリアと同盟を結びました。また、ニカイア帝国との間には、娘マリーを皇帝テオドロス1世ラスカリスに嫁がせることで和平を成立させました。

ヨランドの治世は、ラテン帝国にとって重要な時期でした。彼女は、不安定な情勢の中で、外交と内政の両面で手腕を発揮しました。しかし、1219年にヨランドは亡くなり、その後のラテン帝国は混乱期を迎えることになります。ヨランドの死後、長男フィリップが皇帝位を拒否したため、次男ロベールがラテン皇帝となりました。一方、ヨランドが継承していたナミュール侯位は、彼女がコンスタンティノープルへ向かった際に長男フィリップが引き継いでいました。

ヨランドは、ロベール2世・ド・クルトネーとの間に10人の子供をもうけました。子供たちは、その後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えました。長女マルグリットはナミュール女侯となり、次男フィリップはナミュール侯位を継承しました。三女ヨランドはハンガリー王アンドラーシュ2世と結婚し、五男ロベールはラテン皇帝となりました。七女マリーはニカイア皇帝テオドロス1世ラスカリスと結婚し、九男ボードゥアンは後にラテン皇帝となっています。

ヨランド・ド・エノーは、激動の時代を生きた女性として、その政治手腕と外交能力は高く評価されています。彼女は、夫の不在中にラテン帝国をまとめ、後継国家との関係を築き、その後の歴史に大きな足跡を残しました。

彼女の人生は、中世ヨーロッパの貴族女性の姿を理解する上で、重要なケーススタディとなるでしょう。

子女

マルグリット（1194年頃 - 1270年） - ナミュール女侯。エクソダン領主ラウール1世・ド・リュジニャンと結婚、ヴィアンデン伯アンリ1世と再婚。
フィリップ2世（1195年 - 1226年） - ナミュール侯、ラテン皇帝位につくことを拒否した。
エリザベート（1199年頃 - 1269年以降） - バル＝シュル＝セーヌ伯ゴーシェ・デュ・ピュイゼと結婚、モンタギュー卿ウード・ド・ブルゴーニュと結婚
ヨランド（1200年 - 1233年） - 1215年にハンガリー王アンドラーシュ2世と結婚
ロベール1世（1201年 - 1228年） - ラテン皇帝（1221年 - 1228年）
アニェス（1202年 - 1247年以降） - アカイア公ジョフロワ2世・ド・ヴィルアルドゥアンと結婚
マリー（1204年 - 1222年） - 1219年にニカイア皇帝テオドロス1世ラスカリスと結婚
アンリ2世（1206年 - 1229年） - ナミュール侯
アリエノール（1208年 - 1230年） - カストル伯フィリップ1世・ド・モンフォールと結婚
ボードゥアン2世（1217年 - 1273年） - ラテン皇帝（1228年 - 1261年）

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