テオドロス1世ラスカリス

テオドロス1世ラスカリス：ニカイア帝国の創始者

テオドロス1世ラスカリス（1175年頃 - 1221年）は、東ローマ帝国の亡命政権であるニカイア帝国の建国者であり、その初代皇帝です。彼は、コンスタンティノポリスの名門貴族の家系に生まれ、激動の時代を生き抜きました。

生涯

1199年、テオドロスはアレクシオス3世アンゲロスの皇女アンナ・アンゲリナと結婚し、東ローマ帝国の有力者としての地位を確立しました。しかし、1203年から1204年にかけて、第4回十字軍によるコンスタンティノポリス襲撃が発生し、帝国は大きな危機に瀕します。首都陥落の直前、テオドロスは兄コンスタンティノスと共にコンスタンティノポリスを脱出し、ビテュニア地方のニカイアに逃れました。

ニカイアは、帝国再建の拠点として選ばれました。テオドロスは、コンスタンティノスから権力を譲り受け、小アジアにおいて新生ローマ国家の建設に乗り出します。1205年、彼は正式に「皇帝」の称号を獲得し、ニカイア帝国が誕生しました。

しかし、その後の数年間、ニカイア帝国は周辺の敵国との戦いを余儀なくされました。第二次ブルガリア帝国などの勢力が帝国を脅かす一方、テオドロスはラテン帝国皇帝アンリ1世の打倒を目指し、戦いを継続しました。また、強敵であるトレビゾンド帝国皇帝アレクシオス1世を破り、ルーム・セルジューク朝のスルタン、カイホスロー1世に対しても反撃に出ました。

1210年、義父であるアレクシオス3世に唆されたカイホスロー1世がニカイア帝国に侵攻します。テオドロス1世はアンティオキア付近でカイホスロー1世を破り、彼を戦死させ、アレクシオス3世を捕縛することに成功。この勝利によって、テオドロスの帝位は確固たるものとなりました。

テオドロスの治世末期には、ニカイア帝国の領土はビテュニアから小アジアへと拡大しました。彼は卓越した政治家ではなかったかもしれませんが、その勇気と武勲によって、東ローマ帝国の民は生き延びることができ、西欧の侵略に対して反撃を行うことが可能になったのです。

結婚と子孫

テオドロス1世は、アンナ・アンゲリナとの最初の結婚で3人の娘をもうけました。長女イレーネー・ラスカリナはヨハネス3世ドゥーカス・ヴァタツェスと結婚し、次女マリア・ラスカリナはハンガリー王ベーラ4世に嫁ぎました。

アンナ・アンゲリナが1212年に亡くなると、テオドロス1世はアルメニア王ルーベン3世の娘フィリッパと再婚しましたが、この結婚は翌年には信仰上の理由から無効とされました。この結婚で生まれた息子コンスタンティノスは廃嫡されました。1219年、テオドロスはラテン帝国からピエール2世・ド・クルトネーとヨランド・ド・エノーの皇女マリー・ド・クルトネーを皇后として迎えましたが、子宝には恵まれませんでした。

まとめ

テオドロス1世ラスカリスは、東ローマ帝国の混乱期にニカイア帝国を築き上げ、その基盤を固めた重要な人物です。彼の軍事的成功と政治的決断は、帝国の再興と東ローマ文化の存続に不可欠でした。彼が残した遺産は、後の東ローマ帝国の歴史に大きな影響を与えました。

注釈・出典

この記事には、著作権が消滅した1911年版のブリタニカ百科事典からの情報が含まれています。

関連項目

* ニカイア帝国

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