ヨルムンガンド

ヨルムンガンド：北欧神話の世界蛇

北欧神話において、ヨルムンガンド(Jörmungandr)は、ロキと巨人アングルボザの間に生まれたとされる、巨大な毒蛇です。その名は古ノルド語で「大いなるガンド(精霊)」を意味し、ミズガルズオルム(Miðgarðsormur)、「ミズガルズの大蛇」、「世界蛇」などとも呼ばれています。

ヨルムンガンドは、他の兄弟であるフェンリルやヘル同様に、神々に脅威をもたらす存在として予見されていました。そのため、主神オーディンは幼いヨルムンガンドを海へ捨てたという逸話が残されています。しかし、彼は海中で成長し続け、やがてミズガルズ(人間の世界)を環状に囲むほど巨大な蛇となりました。さらには、自分の尾をくわえるほどの大きさになったと伝えられています。

ヨルムンガンドは、雷神トールの雷槌'>[トール]]との壮絶な戦いで有名です。トールは巨人のヒュミルと共に船で釣りに出かけた際、ヨルムンガンドを釣り上げました。ミョルニル]でヨルムンガンドを打ち殺そうとしますが、ヒュミルは船が沈むのを恐れ、釣り糸を切ってヨルムンガンドを逃がしてしまいます。別のエピソードでは、[[トールは巨人の王ウートガルザ・ロキの宮殿を訪れた際、ヨルムンガンド(猫の姿で変装していた)を持ち上げようとする試練を受けますが、失敗しています。

[ラグナロク]において、ヨルムンガンドは重要な役割を果たします。海から陸に這い上がり、その際、大量の海水が陸地を飲み込むとされています。そして、トールとの最終決戦に臨みます。激闘の末、トールはミョルニルでヨルムンガンドを打ち倒しますが、ヨルムンガンドの毒によってトール自身も命を落とすという、両者死をかけた壮絶な決着を迎えます。

ヨルムンガンドは、その巨大な姿と、神々をも脅かす力によって、北欧神話において象徴的な存在となっています。世界を環状に囲む蛇というイメージは、古くから世界や宇宙を表すモチーフとして、様々な文化に見られるウロボロスという概念と関連付けられることも少なくありません。ヨルムンガンドは、世界の終焉と、神々の力の限界を示す存在として、北欧神話の物語に深みとドラマを与えているのです。

ヨルムンガンドという名は、様々な表記揺れが存在し、「ユルムンガンド」、「イオルムンガンドル」など、複数の日本語訳が見られます。その神話における役割や描写は、複数の古ノルド語文献、例えば『スノッリのエッダ』や『古エッダ』などに記されており、それらの文献の解釈や翻訳の違いが、名前やエピソードの表現に違いを生じさせています。

また、ヨルムンガンドは単なる神話上の存在にとどまらず、現代においても、そのイメージは様々な形で引用され、受け継がれています。例えば、古生物学において、ヨルムンガンドにちなんだ名前を持つモササウルス科の古生物も存在します。これらは、ヨルムンガンドという存在が、時代を超えて人々の想像力を刺激し続けていることを示しています。

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