ヨーロッパリモートセンシング衛星

ヨーロッパリモートセンシング衛星 (ERS)

ヨーロッパリモートセンシング衛星（European Remote-Sensing Satellite、ERS）は、欧州宇宙機関（ESA）の最初の地球観測衛星です。地球の環境や資源を監視するために、様々な技術を駆使したこの衛星は、ERS-1とERS-2という二つの主要なミッションを持ちます。

ERS-1 (1991〜2000)

ERS-1は1991年7月17日にフランス領ギアナのクールーからアリアン4ロケットにより打ち上げられました。衛星は、高度782-785 kmの太陽同期極軌道を周回し、98.52度の傾斜角で地球を観測しました。その設計寿命を超えて、ERS-1は2000年3月10日まで運用されました。この衛星は、3日、35日、336日の周期で様々なミッションを行っており、特に336日周期では、地球の海底地形をレーダー高度計でマッピングする測地ミッションに特化しました。

ERS-2 (1995〜2011)

後を継ぐERS-2は1995年4月21日に同じくフランス領ギアナから打ち上げられました。ERS-1とほぼ同じ設計ですが、幾つかの追加機器や改良が加えられています。ERS-2は、ERS-1と同じ軌道平面を共有することにより、タンデムミッションを展開し、ERS-2の観測一日後にERS-1が通過する形で相互に補完し合いました。ERS-2も35日の周期で観測ミッションを行いました。

しかし、ERS-2は2001年2月までジャイロスコープ無しで運用され、この結果、機器に劣化が見られました。2003年6月22日には搭載されたテープドライブが停止し、地上局が見える限りでの観測が可能となりました。このような状況の中、地球観測能力向上のため、衛星の経路に沿って新たな地上局が設置されました。ERS-2に搭載されていたWind ScatterometerとGOMEの計測機器は、次の次代機であるMetOp-Aが打ち上げられるまで機能し続けました。

ERS-2の後継衛星はEnvisatで、この衛星は改良されたER-2の機器の多くを引き継ぎました。ERS-2の運用は最終的に2011年まで延長され、燃料枯渇のため、2011年9月5日にはバッテリーが切られ、国際的な規範に従い25年以内に大気圏再突入する軌道に導かれました。その後、ERS-2は2024年2月21日に地球の大気圏に突入し、北太平洋に落下することになりました。

機器の詳細

ERS-1およびERS-2は、多様な機器を搭載し、地球に関するデータを収集しました。主な機器は以下の通りです：

• - RA (Radar Altimeter): Ku帯の単一周波数を用いるレーダー高度計です。
• - ATSR (Along-Track Scanning Radiometer): 海面および雲上の温度を測定するための放射計で、可視光から赤外線までの広範囲な波長帯域をカバーします。
• - AMI (Active Microwave Instrument): この機器は、以下のセンサーを含みます。

- SAR (synthetic aperture radar): Cバンドで地表を観測します。
- WSC (Wind Scatterometer): 風の速度と方向を計算するための機器です。

• - MWR: 大気中の水分を計測するマイクロ波放射計です。
• - GOME (Global Ozone Monitoring Experiment): 紫外線や可視光の分光計で、ERS-2のみに搭載されていました。

正確な軌道計算のために、衛星にはPRARE（Precision Range and Range-Rate Equipment）とレーザーリトロリフレクターが搭載されており、これによりレーダー高度計の精度が10 cm以内に保たれました。

拡張された研究と環境モニタリングのために重要な役割を果たしたERSシリーズは、地球観測衛星のパイオニアとなり、多くの後続プロジェクトに影響を与え続けています。

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