ヨーロッパ通常戦力条約

ヨーロッパ通常戦力条約（CFE条約）とは

ヨーロッパ通常戦力条約（CFE条約）は、冷戦時代に東西両陣営が保有する通常兵器の削減を目的として締結された条約です。冷戦終結後の国際秩序を定める上で重要な役割を果たしましたが、その後の国際情勢の変化とともに、その意義と有効性が問われることになりました。

条約の概要

CFE条約は、戦車、装甲戦闘車両、火砲、戦闘機、攻撃ヘリコプターといった通常兵器の保有上限を定め、それを超える兵器の廃棄を義務付けるものでした。1990年11月に署名され、1992年11月に正式に発効しました。条約の履行状況は査察によって確認される仕組みとなっていました。

冷戦終結後、条約の内容を現状に適合させるための交渉が行われ、1999年には「CFE適合条約」が作成されました。しかし、この適合条約は一部の国しか批准せず、発効には至りませんでした。

条約の意義と限界

CFE条約は、第二次世界大戦後初の通常戦力削減に関する軍縮条約として、東西間の軍事的緊張緩和に大きく貢献しました。しかし、冷戦終結後の国際情勢の変化、特にNATOの東方拡大やロシアの台頭といった状況の変化に対応しきれないという限界も抱えていました。

ロシアの履行停止と条約破棄

2007年、ロシアはNATO諸国がCFEを批准していないことを理由に、条約の履行を一時停止しました。その後、2023年には条約を破棄し、CFE体制から正式に脱退しました。これに対し、NATOはロシアの脱退を非難し、CFEの履行を停止すると発表しました。

条約逃れと新たな軍事技術

CFE条約の規制を逃れるための「条約逃れ」と解釈できる兵器の開発・配備も行われました。例えば、条約で規制されない口径の迫撃砲を開発したり、条約に規定されていない「戦車支援戦闘車」を開発・配備するなどの例が見られました。

また、無人機やロボット兵器といった新たな軍事技術については、条約に明確な規定がなく、今後の軍備管理における課題となっています。

締約国

条約の締約国は、NATO加盟国16カ国とワルシャワ条約機構加盟国13カ国でした。ワルシャワ条約機構の解散に伴い、過去の締約国となった国も存在します。

まとめ

CFE条約は、冷戦後のヨーロッパにおける安全保障体制の基盤となるはずでしたが、その後の国際情勢の変化に対応できず、最終的にはロシアの脱退によってその効力を失いました。しかし、通常兵器の軍縮という理念は、今後の国際的な軍備管理の議論においても重要な意義を持ち続けるでしょう。

参考文献

防衛白書

関連項目

NATO
CSCE

外部リンク

条文（欧州安全保障協力機構（OSCE））

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