ライオネル・ターティス国際ヴィオラ・コンクール

概要

ヴィオラ界の偉大な先駆者、ライオネル・ターティスの輝かしい功績を称え、才能ある若手ヴィオラ奏手の発掘・育成を目指して1980年に創設された国際音楽コンクールです。このコンクールは、英国王室属領マン島南部の美しい港町、ポート・エリンにあるエリン芸術センターを主要な舞台として開催されてきました。世界的に権威あるヴィオラ専門コンクールとして認知されており、プリムローズ国際ヴィオラ・コンクール、モーリス・ヴュー国際ヴィオラ・コンクールと共に、「三大ヴィオラ・コンクール」の一つとしてその名を広く知られています。参加資格は、コンクール開催時に30歳未満であるヴィオラ奏者に限られており、世界の若い才能が集う登竜門となっています。

歴史と開催地

ライオネル・ターティス国際ヴィオラ・コンクールは、1980年の第1回開催以降、概ね3年から4年おきに開催されています。初回から現在に至るまで、全ての回がマン島のポート・エリンに位置するエリン芸術センターで開催されてきました。この地は、ヴィオラ奏者ライオネル・ターティスにゆかりのある場所であり、コンクールがその名称を冠していることから、開催地として特別な意味合いを持っています。マン島の静かで美しい環境は、参加者が音楽に集中するための理想的な空間を提供しています。

注目の入賞者たち

このコンクールは、数々の国際的に活躍するヴィオラ奏者を世に送り出してきました。初期の入賞者には、第1回（1980年）で第1位に輝いたポール・ニューバウアーや、第2位のキム・カシュカシャンといった、今日のヴィオラ界を代表する巨匠たちが名を連ねています。続く第2回（1984年）ではシンシア・フェルプス、第3回（1988年）ではHsin-Yun Huangが第1位を獲得するなど、回を追うごとに才能ある奏者が登場しています。その他、ギラド・カルニ（第5回）、ローランド・グラッスル（第6回）、マクシム・リサノフ（第8回第2位）、沈子钰（第11回）、ティモシー・リダウト（第12回）といった、現代ヴィオラ界の第一線で活躍する奏者たちがこのコンクールで実績を残しています。

日本人奏者も素晴らしい成果を上げています。第4回（1991年）では有生智子（Tomoko Ariu）が第2位に、第5回（1994年）では松実健太が第2位に、第11回（2013年）では東条慧が第2位に入賞しています。これらの実績は、日本のヴィオラ奏者が国際的な舞台で高い評価を得ていることを示しています。

課題曲とその意義

ライオネル・ターティス国際ヴィオラ・コンクールの特徴の一つとして、コンクールのために新たなヴィオラ作品が委嘱され、世界初演される機会が多い点が挙げられます。これにより、現代ヴィオラ音楽のレパートリー拡張に大きく貢献しています。初期にはゴードン・ジェイコブやウィルフレッド・ジョセフスといった作曲家のヴィオラ協奏曲が課題曲として演奏されました。1988年の第3回以降は、特にヴィオラ独奏のための作品が重要な課題曲として扱われる傾向にあります。ポール・パターソン「マナナンの湖」（第3回）、ジョン・マッケイブ「2月のソナチネ」（第4回）、リチャード・ロドニー・ベネット「Rondel」（第6回）、ピーター・マックスウェル・デイヴィス「6つのソラーノ変形」（第11回）、ロクサンナ・パヌフニク「Canto」（第13回）など、英国を中心に活躍する作曲家による難易度の高い意欲的な作品が選ばれています。これらの委嘱作品は、参加者の技術と音楽性を深く試すだけでなく、現代ヴィオラ作品の創作活動を刺激する役割も果たしています。直近の第14回（2025年）では、ガース・ノックスのヴィオラ独奏曲「The Bridges of Newcastle」が課題曲に指定されています。

まとめ

ライオネル・ターティス国際ヴィオラ・コンクールは、その歴史と権威において、世界のヴィオラ界に不可欠な存在です。ヴィオラの巨匠の遺志を継ぎ、若き才能に国際的な舞台を提供することで、次世代のヴィオラ演奏家を育成し、ヴィオラ音楽の発展に寄与し続けています。このコンクールでの入賞は、若手奏者のキャリア形成において大きな弾みとなり、その後の国際的な活躍へと繋がることが期待されます。マン島の地から、世界のヴィオラ界へ新たな光が届けられています。

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