ライオン事務器

株式会社ライオン事務器

概要

株式会社ライオン事務器は、東京都中野区に本社を置く、事務機器、文房具、およびオフィス家具の製造販売企業です。その事業範囲は広く、オフィス環境に必要な様々な製品を提供しています。同社は一般社団法人日本オフィス家具協会の正会員としても活動しており、業界内で確固たる地位を築いています。なお、多くの人が知る洗剤や歯磨きなどを手掛ける大手家庭用品メーカーのライオン株式会社とは、資本的・人的な関連は一切ありません。

歴史と歩み

ライオン事務器の源流は、非常に長い歴史を持ちます。創業は江戸時代後期の寛政4年（1792年）、場所は大阪・平野町（現在の大阪市中央区）でした。初代福井小八郎が筆墨商「今津屋」として商いを始めたのが始まりです。その後、明治時代に入ると、福井庄次郎が事業の基盤をさらに強固なものとしました。この時期、同社は時代の変化に対応し、欧米から輸入される新しい文房具や事務用品の取扱いに注力し始めます。舶来物品商組合への加入は、その積極的な姿勢を示しています。製品の品質と信頼性を高めるため、同社が手掛ける製図器に「獅子印」という商標を登録しました。この「獅子印」こそが、後の「ライオン」という社名へと繋がる重要なルーツとなったのです。

昭和初期には、事務用品の卸売を主業務とする「福井商店」として体制を整え、資本を増強しました。この頃、同社は革新的な製品開発にも乗り出し、1931年には業界で初めて多穴式バインダー「ドンコ帳簿」を開発・発売しました。翌1932年には製図器専門の部門を設け、「獅子印」を冠した製図器は、その分野で代表的なブランドへと成長していきます。事業拡大に伴い、1933年には東京への進出を果たし、現在の東京本社の前身となる出張所を開設しました。

第二次世界大戦中は、戦火により1945年に大阪・東京の両本社が焼失するという甚大な被害を受けましたが、戦災を免れた大阪の倉庫を活用して再建に取り組み、「福井商事」と社名を改めて事業を継続しました。戦後の復興期には、1948年に初のヒット商品「シグマボールペン」を発売。さらに1957年には、現在のファクシミリ（FAX）の原型とも言える「トーシャファックス」を発表するなど、新しい技術を取り入れた製品開発を進めました。

日本の高度経済成長期には、事業の全国展開を加速させました。広島、福岡、札幌、金沢、京都など、主要都市に次々と支店を開設し、企業規模を拡大しました。そして1980年、長年親しまれてきた「獅子印」にちなんだ現在の社名「株式会社ライオン事務器」へと正式に改称しました。創業200周年を迎えた1992年には、その長い歴史が改めて注目されました。

新しい時代の要請に応えるため、品質管理や環境問題への対応も積極的に行っています。1998年には品質マネジメントシステムの国際規格ISO 9001、2000年には環境マネジメントシステムの国際規格ISO 14001の認証をそれぞれ取得しました。長らく本社は大阪にありましたが、2001年に東京都中野区へと本社機能を移転しました。

製品開発では、2005年に世界で初めてショルダーサポート機構を採用した先進的なオフィスチェア「i-Beetle」を発表するなど、ユニークな製品を生み出しています。個人情報保護への意識が高まる中、2006年にはプライバシーマークの付与認定を受けました。2008年には、大手事務機器販売会社である株式会社大塚商会との間で資本業務提携を締結し、事業シナジーの創出を目指しています。創業220周年を迎えた2012年には、その歴史の重みが感じられました。2014年には本社内に、多様な働き方を提案する体験型ショールーム「WORK PALETTE」を開設し、顧客への情報提供と交流の場を設けています。

主な製品と広告活動

ライオン事務器の取り扱う製品は多岐にわたります。事務用机や椅子、収納家具といったオフィス全体の環境を整えるオフィス家具から、ファイル、パンチ、ステープラーなどの伝統的な文房具、そしてシュレッダー、ラミネーターといった事務機器に至るまで、幅広いニーズに対応する製品を展開しています。

過去の広告活動も特筆すべき点です。特に1970年代の高度経済成長期には、全国紙に多数の広告を掲載し、大きな話題を呼びました。当時の主力製品の一つであったライオンファイルに関する広告では、「十歳にして愛を知った。」や「うちの息子は厳父と岳父の違いも知らない、愚息だ。」といった、印象に残るキャッチコピーが用いられました。これらのコピーは、著名なコピーライターであり、雑誌『AERA』の名称考案者としても知られる眞木準氏の手によるものです。かつては、読売新聞の朝刊1面に毎月定期的に広告を掲載するなど、積極的なメディア露出を行っていました。

現代では、事務用品の市場環境の変化、特に低価格化が進んだこともあり、広告戦略も変化しています。現在は、主に新聞の第一面に企業やブランド名のみをシンプルに掲載する広告が多く見られる傾向にあります。これは、長年の歴史と信頼によって培われたブランド力を効果的に活用するアプローチと言えるでしょう。

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