ライトセイル2号

ライトセイル2号

ライトセイル2号（LightSail-2）は、宇宙探査の発展を支援する国際的な非営利団体である惑星協会が開発した、太陽帆（ソーラーセイル）の技術実証を目的とした小型宇宙機です。

開発の背景と経緯

惑星協会は、以前にもソーラーセイル宇宙機である「コスモス1号」を2005年に打ち上げましたが、これは軌道投入に失敗しました。同時期にNASAのエイムズ研究センターが進めていた「ナノセイルD」計画も、ロケットの不具合により失敗しています。このような先行プロジェクトの経験を踏まえ、惑星協会は2009年にナノセイルD計画を引き継ぎ、「ライトセイル計画」として再始動させました。

開発チームには、NASAのジェット推進研究所（JPL）やAerospace Corporationのメンバーも参加し、2011年までには最終設計審査を通過しました。当初は2012年の打ち上げを目指していましたが、計画は大幅に遅れました。ライトセイル2号の開発費用は約180万ドルと見積もられ、これは惑星協会の会員からの会費や個人からの寄付によって賄われています。機体の製造は、カリフォルニア州サンルイスオビスポにあるStellar Exploration社が担当しました。

本機の前に、試験機である「ライトセイル1号」（当時はLightSail-Aと呼ばれていました）が2015年5月20日にアトラスVロケットで打ち上げられ、低高度軌道でのセイル展開試験に成功しました。ライトセイル1号は同年6月13日に大気圏に再突入し、その役割を終えています。なお、ライトセイル計画では2016年2月に命名規則が変更されたため、試験機がライトセイル1号と正式に位置づけられ、今回打ち上げられた機体がライトセイル2号となりました。

機体の構造

ライトセイル2号は、一辺が約10センチメートルの立方体を3つ連結した、「3U」と呼ばれるサイズの超小型衛星（キューブサット）です。この3つのモジュールのうち、1つは姿勢制御や通信、電源などを司る制御モジュールとして機能し、残りの2つにはソーラーセイルがコンパクトに折り畳まれて格納されています。

搭載されているソーラーセイルは、非常に薄いマイラーフィルムでできており、4枚の三角形の帆で構成されています。軌道上で展開されると、その総面積は約32平方メートルにもなります。この巨大な帆に太陽光があたることで生じる微弱な光圧を利用して、宇宙機を加速させたり、軌道を変更したりすることを実証するのがライトセイル2号の主なミッションでした。

打ち上げと運用

ライトセイル2号は、2019年6月25日にスペースX社のファルコンヘビーロケットに搭載され、アメリカ宇宙軍のSTP-2ミッションの相乗り衛星の一つとして打ち上げられました。目標高度はおよそ800キロメートルでしたが、実際には約720キロメートルの軌道に投入されました。軌道上では、母船の役割を果たす「Prox-1」という小型衛星から分離されました。セイル展開の確認や、その後の軌道追跡、コマンド送信なども、このProx-1衛星を介して行われました。

軌道投入後、慎重な準備を経て、2019年7月23日にはライトセイル2号のソーラーセイルが無事展開されました。これは、実証成功に向けた重要な第一歩でした。さらに、同年7月31日には、太陽光圧によってライトセイル2号の軌道を実際に変更できることの確認にも成功しました。帆の向きを適切に制御することで、太陽光圧が生む推力の方向を調整し、軌道の高度を上昇させる実証が行われたのです。

今後の展望

惑星協会では、ライトセイル計画のさらなる発展として、後継機であるライトセイル3号および4号の計画も進められています。ライトセイル3号では、より長期間の飛行を行い、太陽帆のみで高高度の軌道に到達することを目指しています。そして、ライトセイル4号では、将来的には太陽と地球の重力が均衡するラグランジュ点（特にL1点）への到達を目指すなど、より高度な太陽帆技術の応用が検討されています。

ライトセイル2号の実証成功は、太陽帆という推進技術の実現可能性を示す重要なマイルストーンとなりました。これは、電源を必要とせず、太陽のエネルギーのみを利用して宇宙を航行する未来の宇宙探査への道を切り拓くものです。

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