ライヒ参議院

ライヒ参議院：ヴァイマル共和政の二院制の一翼

ライヒ参議院（Reichsrat）は、ヴァイマル共和政時代のドイツ国において、国会（Reichstag）と並び立つ立法機関でした。各州（ラント）の代表によって構成され、連邦レベルでの法律制定に重要な役割を果たしました。

概要

ライヒ参議院の議員は、各ラントの政府によって任命されました。彼らは、憲法改正や州の権能に影響を与える法律の制定に関与しました。一方、国会議員は国民の直接選挙によって選出されました。ヴァイマル憲法は明確に二院制を規定してはいませんでしたが、ライヒ参議院は、イギリスの貴族院のような上院としての機能を果たしていました。ライヒ参議院は、ドイツ帝国時代に存在した連邦参議院（Bundesrat）の後継機関にあたります。

歴史

ドイツ帝国時代の連邦参議院

ライヒ参議院の前身である連邦参議院は、1867年の北ドイツ連邦創設時に設立され、1871年のドイツ帝国成立後も存続しました。ビスマルク憲法下では、帝国議会と連邦参議院による二院制が採用されていました。帝国議会の議員は男子普通選挙によって選出されましたが、帝国議会の議案や議決には、連邦参議院の同意が不可欠でした。連邦参議院は各邦国の代表で構成されていたため、普通選挙による民主的な要素は限定的でした。

憲法改正には、連邦参議院での14票以上の賛成が必要でしたが、プロイセン王国が17票を有していたため、プロイセンの同意なしに改正を行うことは事実上不可能でした。また、ドイツ皇帝の地位はプロイセン国王が兼務し、皇帝は戦争、議会、帝国宰相の人事など広範な権力を持っていました。このように、連邦制を採用しつつも、プロイセンが帝国を主導する体制が確立されていました。

ヴァイマル共和政下のライヒ参議院

帝政崩壊後に制定されたヴァイマル憲法では、帝政時代の領邦が州（ラント）に格下げされ、中央集権化が進められました。ライヒ参議院は連邦政府の政策決定に大きな影響力を持つことはありませんでしたが、国会が3分の2の多数決で可決した法律に対して拒否権を行使することができました。ヴァイマル憲法は、プロイセン自由州の勢力を抑制するために、ライヒ参議院の議員が各州の人口に応じて州議会によって選出されることを定めました。しかし、ライヒ参議院の議員は、政党の離合集散が頻繁に起こる状況下でも強力な権限を保持し、実際にライヒ参議院によって拒否権が行使された法案は成立しませんでした。

ナチス政権下での廃止

1933年にアドルフ・ヒトラー率いるナチ党が政権を掌握した後、全権委任法によって国会、ライヒ参議院、大統領の権限は名目上維持されましたが、実際にはヒトラーは憲法に違反する法律の制定や新憲法の制定を含む無制限の権限を与えられ、ヴァイマル憲法体制は崩壊しました。

1934年1月30日のライヒ新構成法によってライヒ参議院の廃止が決定され、同年2月14日にライヒ参議院廃止法が制定され、ライヒ参議院は正式に廃止されました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、ドイツ連邦共和国（西ドイツ）が設立された際、ナチス政権によって廃止されていたライヒ参議院は、連邦参議院（Bundesrat）として復活し、ライヒ参議院時代よりも強力な権限が付与されました。プロイセン国家は、連合国軍占領下の1947年に連合国管理理事会の指令によって完全に廃止されました。

ライヒ参議院は、ヴァイマル共和政という短い期間に存在したものの、ドイツの連邦主義と議会制民主主義の歴史において重要な役割を果たしました。

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