ライン (音響機器)

ラインとは

ラインとは、音響機器間でアナログ音声信号を伝送する際に使用される端子と信号の総称です。スピーカーやヘッドフォン、マイクロフォンなど、増幅を必要とする機器の端子とは異なり、ラインは信号の伝送に特化しています。主に、アンプやミキサーなどの機器間で音声信号を受け渡しする際に用いられます。

電気的特性

ラインの電気的特性は、使用される分野や国によって基準が異なります。業務用と民生用では電圧レベルが異なり、例えば、民生用機器ではアンバランス接続で-10dBV、バランス接続で2Vppが一般的です。業務用機器では、アメリカでは+4dBu、ドイツでは+6dBuが目安とされています。

ラインレベル

ラインで使用される電圧レベルは「ラインレベル」と呼ばれます。これらのレベルは、機器間で信号を適切に伝送するために重要です。レベルが不適切だと、ノイズの増加や信号の歪みが生じる可能性があります。

インピーダンス

インピーダンスは、信号の伝送効率に影響を与える重要な要素です。理想的には、出力インピーダンスと入力インピーダンスを一致させることで、最も効率よく信号を伝送できます。これを「インピーダンス整合」と呼びます。歴史的な背景から、電話回線と同様の600Ωが使われることもあります。しかし、実際には、出力側をローインピーダンス、入力側をハイインピーダンスにする「インピーダンス・ブリッジング」方式、いわゆる「ロー出しハイ受け」が一般的です。この方式は、インピーダンスのばらつきに強く、機器間の接続を柔軟に行えます。

バランス／アンバランス

機器同士の接続には、アンバランス接続とバランス接続の2つの方式があります。

アンバランス接続: 接地線と単一の信号線で接続する方式です。RCAピンコネクタやTSフォーンコネクタを使用する機器で広く使われています。構造がシンプルで扱いやすい反面、ノイズの影響を受けやすいという欠点があります。

バランス接続: 接地線と差動信号用のホット線・コールド線で接続する方式です。3ピンXLRキャノンコネクタを採用する業務用機器で一般的です。コモンモードノイズを打ち消すことができ、ノイズに強い安定した信号伝送が可能です。

コネクタ

ライン入出力に用いられるコネクタには様々な種類があります。

RCAピンコネクタ
フォーンコネクタ
XLRキャノンコネクタ
110号（Bゲージ）コネクタ
TTバンタムコネクタ

これらのコネクタは、変換アダプタを用いて相互に接続することも可能です。また、アンバランス接続では2極がモノラル、3極がステレオ、バランス接続では3極がモノラル、5極がステレオに対応します。

他の音声端子との中継機器

ラインは、マイクロフォンやヘッドフォン、ギターなどの電気楽器の端子とは電気的特性が異なるため、直接接続することはできません。これらの機器を接続するには、適切な中継機器を使用する必要があります。

マイクロフォン（マイクレベル） → ライン: マイクプリアンプを使用します。
電気楽器（インストゥルメントレベル） → ライン: ダイレクトボックスを使用します。
レコードプレーヤー（フォノ） → ライン: フォノイコライザーアンプを使用します。
デジタル音声 → ライン: デジタル-アナログ変換回路（DAC）を使用します。
ライン → デジタル音声: アナログ-デジタル変換回路（ADC）を使用します。
ライン → ヘッドフォン: ヘッドホンアンプを使用します。
ライン → スピーカー: パワーアンプを使用します。

これらの他にも、中継回路を内蔵したAVアンプやパワードミキサーなどの汎用機器も使用できます。

まとめ

ラインは、音響機器間でのアナログ音声信号伝送に不可欠な要素です。この記事では、ラインの基本から応用までを解説しました。これらの知識が、より良い音響環境を構築する一助となれば幸いです。

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