入力インピーダンス

入力インピーダンスとは

入力インピーダンスとは、電気回路や電子機器において、その入力端子から見たインピーダンス（交流回路における抵抗の概念）のことです。これは、回路に信号を入力する際に、信号源が「どれだけの負荷」を感じるかを示す指標となります。入力インピーダンスは、負荷インピーダンスや外部インピーダンスとも呼ばれることがあります。

音響機器における入力インピーダンス

オーディオ機器のライン接続では、一般的に「ロー出しハイ受け」という接続方法が用いられます。これは、出力側のインピーダンスを低く、入力側のインピーダンスを高く設定する接続方法です。この方式の利点は、様々な機器を接続する際にインピーダンス整合を厳密に行う必要がないことです。例えば、アンプの入力インピーダンスは数kΩから数十kΩと、ラインの標準インピーダンスである600Ωよりもかなり高く設定されています。これは、入力側で信号を電圧として受け取るため、比較的高いインピーダンスが適しているからです。

真空管アンプや、現代のアンプでもFETを工夫して使用すれば、100kΩ～1MΩといった非常に高い入力インピーダンスも実現可能です。ただし、入力インピーダンスが高すぎると、ノイズの影響を受けやすくなるというデメリットがあります。そのため、実用上はノイズとのバランスを考慮し、適切な値に設定されます。

高周波信号システムにおける入力インピーダンス

ビデオ信号などの高周波信号を扱うシステムでは、入力インピーダンス、伝送線路のインピーダンス、出力インピーダンスを等しくなるように設計する必要があります。これは「無反射インピーダンス整合」あるいは「整合接続」と呼ばれます。インピーダンスが整合されていないと、信号が反射してしまい、受信側でゴーストと呼ばれる現象が発生します。ゴーストは、元の画像が少し遅れて表示される現象で、画質を著しく劣化させます。そのため、高周波システムでは、インピーダンス整合が不可欠となります。

インピーダンス整合の状態は以下のように表すことができます。

Zload = Zline = Zsource

ここで、Zloadは負荷インピーダンス、Zlineは伝送線路のインピーダンス、Zsourceは信号源のインピーダンスを表します。

高周波電力システムにおけるインピーダンス整合

電力を搬送する電気回路、特に高周波電力システムでは、インピーダンス整合が非常に重要となります。その理由は以下の二つです。

1. 最大電力伝送
最大効率で電力を伝送するためには、送信機の出力、伝送線路、アンテナシステムといった全体でインピーダンスを整合させる必要があります。この場合、負荷インピーダンスは送信機側のインピーダンスの複素共役と等しくなる必要があります。つまり、Zload = Zsource という関係が成り立ちます。

2. 反射の防止
インピーダンスが整合されていないと、伝送線路内で信号が反射し、定常波が生じます。これにより、電圧が通常よりも高くなり、絶縁破壊や機器の破損を引き起こす可能性があります。反射のない整合のとれた状態では、Zload = Zsource となり、複素共役の関係は必要ありません。

抵抗成分のみを考慮した場合、最大電力伝送の条件と反射防止の条件は等価になります。

まとめ

入力インピーダンスは、電気回路や電子機器において、信号を効率的に伝送し、機器を保護する上で重要な要素です。音響機器では利便性を優先したロー出しハイ受け接続が一般的ですが、高周波信号や電力システムでは、インピーダンス整合を考慮した設計が不可欠となります。適切なインピーダンス整合は、信号の品質を保ち、システム全体の安定性を高めるために重要な役割を果たします。

参考文献

The Art of Electronics, Winfield. Hill, Paul Horowitz, Cambridge University Press, ISBN 0521370957
"Aortic input impedance in normal man: relationship to pressure wave forms", JP Murgo, N Westerhof, JP Giolma, SA Altobelli pdf
A practical introduction to electronic circuits, M H Jones, Cambridge University Press, ISBN 0-521-31312-0

外部リンク

Calculation of the damping factor and the damping of impedance bridging
Impedance and Reactance

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