ライヴ・イン・ジャパン (ヴァン・ヘイレンのアルバム)
ヴァン・ヘイレンのライブ・アルバム『ライヴ・イン・ジャパン』（原題：Tokyo Dome Live in Concert）は、2013年に録音され、2015年に発表されました。この作品は、バンドの伝説的なヴォーカリスト、デイヴィッド・リー・ロスが復帰したラインナップとしては初めて公式にリリースされたライブ音源集として特筆されます。
本作に収録されているのは、2012年のアルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』リリースに伴うワールドツアーの中から、2013年6月21日に日本の東京ドームで行われた公演の模様です。数あるツアーの中からこの日の録音が選ばれた理由について、ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンは、ライブ・パフォーマンスにおいてヴォーカルが受ける負担が大きい点を挙げ、自身と息子ウルフギャングが担当するバッキング・ヴォーカルのコンディションも日々変動するため、最終的な収録公演の選定はデイヴィッド・リー・ロスに一任したと述べています。当初、バンドはデモ音源のリミックスや、活動初期のライブ音源を発掘して発表することを検討していました。しかし、『ワシントン・タイムズ』誌のインタビューによれば、デモ・テープは既に紛失しており、市場に出回っていた初期のライブを収録したブートレグ音源は音質向上が困難であったため、新たにライブを録音してリリースする方針に変更されたという経緯があります。
アルバムのミキシングは、ローリング・ストーンズやブルース・スプリングスティーンなど、数々の名盤を手がけてきたことで知られる著名なサウンド・エンジニア、ボブ・クリアマウンテンが担当しました。彼は、ライブの臨場感を重視し、演奏上のわずかなミスはあえて修正せず、そのまま収録する判断を下しました。マスタリングはクリス・ベルマンが担当しており、彼は本作の作業と並行して、デイヴィッド・リー・ロスがヴァン・ヘイレンに在籍していた時代の旧作群のリマスターも行っていたと伝えられています。
アルバムのアートワーク、特にジャケットと裏ジャケットのデザインには、アール・デコ様式を深く愛好するデイヴィッド・リー・ロス自身のアイデアが強く反映されており、アドルフ・ムーロン・カッサンドルによる絵画が採用されています。
ライブの中盤で披露される「ロックン・ロール・ベイビー」では、イギリスの伝説的バンド、ディープ・パープルの代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の有名なリフが挿入されるという一幕があります。この引用について、エドワード・ヴァン・ヘイレンは、ディープ・パープルのライブ名盤『メイド・イン・ジャパン』がこの曲（あるいは当時のロックンロール・シーン全体）を「水の中から浮上させた」のだから、日本で演奏する際にこのリフを取り入れるのは面白いだろうと考えたと語っています。
本作のリリースに先立ち、ファンに向けて「パナマ」と「悪魔のハイウェイ」のライブ・バージョンがオーディオ・トラックとして先行公開され、アルバムへの期待感を高めました。アルバム発表後の2015年3月30日と31日には、プロモーション活動の一環として、アメリカの人気深夜テレビ番組『ジミー・キンメル・ライブ!』に出演しました。これは、デイヴィッド・リー・ロスを含む当時のラインナップのヴァン・ヘイレンにとって、アメリカのテレビ番組で初めてライブ・パフォーマンスを披露する機会となり、大きな話題となりました。
母国アメリカでのセールスは好調でした。発売初週に約3万1千枚を売り上げ、権威あるBillboard 200総合アルバム・チャートで20位にランクインしました。さらに、『ビルボード』誌が発表する専門チャートでは、ハード・ロック・アルバム・チャートで2位、ロック・アルバム・チャートでも5位を記録しています。
音楽評論家からの評価も概ね好意的でした。音楽データベース・サイトのオールミュージックにおいて、評論家のStephen Thomas Erlewineは5点満点中3点を与え、「これは、ファンの多くが夢見るであろう、1977年から1984年のオリジナル・ラインナップ全盛期を捉えた完璧な2枚組ライブ盤ではないかもしれないが、予想以上に力強い再結成を捉えた作品である」「ロスの声は確かに昔と同じではないものの、彼は今なおステージ上でそのユニークな魅力とカリスマ性を放っている」と評し、現在のバンドのパフォーマンスを肯定的に捉えています。
本作は、ディスク1とディスク2に分かれた計23トラック（ドラム・ソロを含む）で構成されています。バンドの初期の代表曲から、デイヴィッド・リー・ロス復帰作である『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』からの楽曲まで、幅広い時期のレパートリーが披露されています。
ディスク1
1. アンチェインド - "Unchained" (4:56)
アルバム『戒厳令』（1981年）より。
2. 悪魔のハイウェイ - "Runnin' with the Devil" (3:44)
アルバム『炎の導火線』（1978年）より。
3. シーズ・ザ・ウーマン - "She's the Woman" (David Lee Roth, Edward Van Halen, Wolfgang Van Halen, Alex Van Halen) (2:57)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』（2012年）より。
4. アイム・ザ・ワン - "I'm the One" (4:12)
アルバム『炎の導火線』より。
5. タトゥー - "Tattoo" (D. Lee Roth, E. Van Halen, W. Van Halen, A. Van Halen) (4:32)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』より。
6. エヴリバディ - "Everybody Wants Some!!" (8:30)
アルバム『暗黒の掟』（1980年）より。
7. サムボディ・ゲット・ミー・ア・ドクター - "Somebody Get Me a Doctor" (3:22)
アルバム『伝説の爆撃機』（1979年）より。
8. チャイナ・タウン - "China Town" (D. Lee Roth, E. Van Halen, W. Van Halen, A. Van Halen) (3:22)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』より。
9. ヒア・アバウト・イット・レイター - "Hear About It Later" (5:11)
アルバム『戒厳令』より。
10. オー・プリティ・ウーマン - "(Oh) Pretty Woman" (Roy Orbison, Bill Dees) (3:08)
アルバム『ダイヴァー・ダウン』（1982年）より。
11. ミー&ユー（ドラム・ソロ） - "Me & You (Drum Solo)" (2:54)
12. ユー・リアリー・ガット・ミー - "You Really Got Me" (Ray Davies) (5:34)
アルバム『炎の導火線』より。
ディスク2
1. 踊り明かそう - "Dance the Night Away" (4:27)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
2. ウェイト - "I'll Wait" (D. Lee Roth, E. Van Halen, Michael Anthony, A. Van Halen, Michael McDonald) (5:03)
アルバム『1984』（1984年）より。
3. ロックン・ロール・ベイビー - "And the Cradle Will Rock..." (3:44)
アルバム『暗黒の掟』より。
4. ホット・フォー・ティーチャー - "Hot for Teacher" (5:44)
アルバム『1984』より。
5. ウィメン・イン・ラヴ… - "Women in Love..." (4:24)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
6. ロメオ・デライト - "Romeo Delight" (5:47)
アルバム『暗黒の掟』より。
7. ミーン・ストリート - "Mean Street" (5:11)
アルバム『戒厳令』より。
8. ビューティフル・ガールズ - "Beautiful Girls" (3:36)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
9. アイス・クリーム・マン - "Ice Cream Man" (John Brim) (5:10)
アルバム『炎の導火線』より。
10. パナマ - "Panama" (4:20)
アルバム『1984』より。
11. 暗闇の爆撃 - "Eruption" (8:08)
アルバム『炎の導火線』より。
12. 叶わぬ賭け - "Ain't Talkin' 'bout Love" (6:07)
アルバム『炎の導火線』より。
13. ジャンプ - "Jump" (5:48)
アルバム『1984』より。
参加ミュージシャン:
デイヴィッド・リー・ロス - ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン - ギター、キーボード、バッキング・ボーカル
ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン - ベース、バッキング・ボーカル
アレックス・ヴァン・ヘイレン - ドラムス、パーカッション
（注：収録曲リストの共作者表記はオリジナル情報に基づいています。）
制作の背景
本作に収録されているのは、2012年のアルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』リリースに伴うワールドツアーの中から、2013年6月21日に日本の東京ドームで行われた公演の模様です。数あるツアーの中からこの日の録音が選ばれた理由について、ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンは、ライブ・パフォーマンスにおいてヴォーカルが受ける負担が大きい点を挙げ、自身と息子ウルフギャングが担当するバッキング・ヴォーカルのコンディションも日々変動するため、最終的な収録公演の選定はデイヴィッド・リー・ロスに一任したと述べています。当初、バンドはデモ音源のリミックスや、活動初期のライブ音源を発掘して発表することを検討していました。しかし、『ワシントン・タイムズ』誌のインタビューによれば、デモ・テープは既に紛失しており、市場に出回っていた初期のライブを収録したブートレグ音源は音質向上が困難であったため、新たにライブを録音してリリースする方針に変更されたという経緯があります。
音響とアートワーク
アルバムのミキシングは、ローリング・ストーンズやブルース・スプリングスティーンなど、数々の名盤を手がけてきたことで知られる著名なサウンド・エンジニア、ボブ・クリアマウンテンが担当しました。彼は、ライブの臨場感を重視し、演奏上のわずかなミスはあえて修正せず、そのまま収録する判断を下しました。マスタリングはクリス・ベルマンが担当しており、彼は本作の作業と並行して、デイヴィッド・リー・ロスがヴァン・ヘイレンに在籍していた時代の旧作群のリマスターも行っていたと伝えられています。
アルバムのアートワーク、特にジャケットと裏ジャケットのデザインには、アール・デコ様式を深く愛好するデイヴィッド・リー・ロス自身のアイデアが強く反映されており、アドルフ・ムーロン・カッサンドルによる絵画が採用されています。
特筆すべき演奏
ライブの中盤で披露される「ロックン・ロール・ベイビー」では、イギリスの伝説的バンド、ディープ・パープルの代表曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の有名なリフが挿入されるという一幕があります。この引用について、エドワード・ヴァン・ヘイレンは、ディープ・パープルのライブ名盤『メイド・イン・ジャパン』がこの曲（あるいは当時のロックンロール・シーン全体）を「水の中から浮上させた」のだから、日本で演奏する際にこのリフを取り入れるのは面白いだろうと考えたと語っています。
リリースとプロモーション
本作のリリースに先立ち、ファンに向けて「パナマ」と「悪魔のハイウェイ」のライブ・バージョンがオーディオ・トラックとして先行公開され、アルバムへの期待感を高めました。アルバム発表後の2015年3月30日と31日には、プロモーション活動の一環として、アメリカの人気深夜テレビ番組『ジミー・キンメル・ライブ!』に出演しました。これは、デイヴィッド・リー・ロスを含む当時のラインナップのヴァン・ヘイレンにとって、アメリカのテレビ番組で初めてライブ・パフォーマンスを披露する機会となり、大きな話題となりました。
反響と評価
母国アメリカでのセールスは好調でした。発売初週に約3万1千枚を売り上げ、権威あるBillboard 200総合アルバム・チャートで20位にランクインしました。さらに、『ビルボード』誌が発表する専門チャートでは、ハード・ロック・アルバム・チャートで2位、ロック・アルバム・チャートでも5位を記録しています。
音楽評論家からの評価も概ね好意的でした。音楽データベース・サイトのオールミュージックにおいて、評論家のStephen Thomas Erlewineは5点満点中3点を与え、「これは、ファンの多くが夢見るであろう、1977年から1984年のオリジナル・ラインナップ全盛期を捉えた完璧な2枚組ライブ盤ではないかもしれないが、予想以上に力強い再結成を捉えた作品である」「ロスの声は確かに昔と同じではないものの、彼は今なおステージ上でそのユニークな魅力とカリスマ性を放っている」と評し、現在のバンドのパフォーマンスを肯定的に捉えています。
収録曲と参加メンバー
本作は、ディスク1とディスク2に分かれた計23トラック（ドラム・ソロを含む）で構成されています。バンドの初期の代表曲から、デイヴィッド・リー・ロス復帰作である『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』からの楽曲まで、幅広い時期のレパートリーが披露されています。
ディスク1
1. アンチェインド - "Unchained" (4:56)
アルバム『戒厳令』（1981年）より。
2. 悪魔のハイウェイ - "Runnin' with the Devil" (3:44)
アルバム『炎の導火線』（1978年）より。
3. シーズ・ザ・ウーマン - "She's the Woman" (David Lee Roth, Edward Van Halen, Wolfgang Van Halen, Alex Van Halen) (2:57)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』（2012年）より。
4. アイム・ザ・ワン - "I'm the One" (4:12)
アルバム『炎の導火線』より。
5. タトゥー - "Tattoo" (D. Lee Roth, E. Van Halen, W. Van Halen, A. Van Halen) (4:32)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』より。
6. エヴリバディ - "Everybody Wants Some!!" (8:30)
アルバム『暗黒の掟』（1980年）より。
7. サムボディ・ゲット・ミー・ア・ドクター - "Somebody Get Me a Doctor" (3:22)
アルバム『伝説の爆撃機』（1979年）より。
8. チャイナ・タウン - "China Town" (D. Lee Roth, E. Van Halen, W. Van Halen, A. Van Halen) (3:22)
アルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』より。
9. ヒア・アバウト・イット・レイター - "Hear About It Later" (5:11)
アルバム『戒厳令』より。
10. オー・プリティ・ウーマン - "(Oh) Pretty Woman" (Roy Orbison, Bill Dees) (3:08)
アルバム『ダイヴァー・ダウン』（1982年）より。
11. ミー&ユー（ドラム・ソロ） - "Me & You (Drum Solo)" (2:54)
12. ユー・リアリー・ガット・ミー - "You Really Got Me" (Ray Davies) (5:34)
アルバム『炎の導火線』より。
ディスク2
1. 踊り明かそう - "Dance the Night Away" (4:27)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
2. ウェイト - "I'll Wait" (D. Lee Roth, E. Van Halen, Michael Anthony, A. Van Halen, Michael McDonald) (5:03)
アルバム『1984』（1984年）より。
3. ロックン・ロール・ベイビー - "And the Cradle Will Rock..." (3:44)
アルバム『暗黒の掟』より。
4. ホット・フォー・ティーチャー - "Hot for Teacher" (5:44)
アルバム『1984』より。
5. ウィメン・イン・ラヴ… - "Women in Love..." (4:24)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
6. ロメオ・デライト - "Romeo Delight" (5:47)
アルバム『暗黒の掟』より。
7. ミーン・ストリート - "Mean Street" (5:11)
アルバム『戒厳令』より。
8. ビューティフル・ガールズ - "Beautiful Girls" (3:36)
アルバム『伝説の爆撃機』より。
9. アイス・クリーム・マン - "Ice Cream Man" (John Brim) (5:10)
アルバム『炎の導火線』より。
10. パナマ - "Panama" (4:20)
アルバム『1984』より。
11. 暗闇の爆撃 - "Eruption" (8:08)
アルバム『炎の導火線』より。
12. 叶わぬ賭け - "Ain't Talkin' 'bout Love" (6:07)
アルバム『炎の導火線』より。
13. ジャンプ - "Jump" (5:48)
アルバム『1984』より。
参加ミュージシャン:
デイヴィッド・リー・ロス - ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン - ギター、キーボード、バッキング・ボーカル
ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン - ベース、バッキング・ボーカル
アレックス・ヴァン・ヘイレン - ドラムス、パーカッション
（注：収録曲リストの共作者表記はオリジナル情報に基づいています。）
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