ライ麦ビール

ライ麦ビール（Rye beer、Roggenbier）は、ビールの一種で、大麦麦芽の一部をライ麦で置き換えて作られます。ライ麦の使用により、独特の風味と香りが生まれます。

概要

ライ麦ビールは、原料の30%以上にライ麦を使用しています。苦味は少なく、ほのかなバナナのような香りや、クローブを思わせるスパイシーな香りが特徴です。液体の色は淡色から濃色まで幅広く、ライ麦パンのような風味や、ローストした麦芽の渋味、甘味のバランスが楽しめます。

ライ麦にはβ-グルカンが含まれており、糖化工程で粘度が増し、ろ過の際に目詰まりを起こしやすくなります。そのため、近代的な醸造設備ではろ過が難しく、ライ麦の使用量を減らして製造されることもあります。伝統的な設備を使用すれば問題ありませんが、製造の難しさから、世界的に見てもライ麦ビールを製造している醸造所は限られています。

各国のライ麦ビール

ドイツ

ドイツでは、ロッゲンビア（Roggenbier）と呼ばれ、最大60%のライ麦麦芽を使用して作られます。バイエルン州が発祥で、ヘーフェヴァイツェンと同じ酵母で醸造されるため、軽くてドライかつスパイシーな味わいが特徴です。

バイエルン州では、15世紀からライ麦麦芽がビール醸造に使用されていましたが、不作の期間を経て、ビール純粋令によりライ麦はパン用、大麦はビール用と規定されました。その結果、ロッゲンビアは500年近く途絶えていました。

1980年代末、レーゲンスブルク近郊のSpezialbrauerei Schierlingで、改良された糖化培地を用いて、初の近代型ロッゲンビア「Schierlinger Roggen」が製造されました。この近代型ロッゲンビアは、アルコール度数約5%、色は濃く、穀物の風味が豊かで、プンパーニッケルのような味わいが特徴です。通常、麦芽の50%以上がライ麦由来です。

アメリカ合衆国

アメリカでは、ホームブルーイングやマイクロ[ブルワリー]]でライ麦ビールがよく作られています。ホップを多く使用し、[[インディア・ペールエール]に似たスタイルに仕上げることもあり、ライIPAまたは"Rye-P-A"と呼ばれています。

日本

日本では、ベアレン醸造所（岩手県）が2022年から数量限定でライ麦ビールの醸造・販売を行っています。

関連する飲料

ライ麦を使用した関連する飲料として、以下のものがあります。

フィンランドのサハティ：ライ麦、杜松果、パン酵母から作られる伝統的なビールです。
スラヴ人のクワス：ライ麦パンを浸漬・発酵させて作る飲料です。

ライ麦ビールは、その独特の風味と製造の難しさから、多様なバリエーションと歴史を持つ興味深いビールです。

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