ラウラ・バッシ

ラウラ・バッシ：科学の道を切り拓いた女性物理学者

ラウラ・バッシ（Laura Bassi, 1711年10月31日 - 1778年2月20日）は、18世紀のイタリアで活躍した物理学者、科学者です。彼女は、ヨーロッパの大学で初めて教授となった女性として、その名を知られています。

生涯

ラウラ・バッシは、1711年にボローニャで生まれました。経済的に恵まれない環境でしたが、弁護士の父は、一人娘であるラウラに最高の教育を受けさせたいと願っていました。5歳からラテン語、フランス語、数学を学び始め、12歳で医学教授の弟子としてボローニャ大学への入学を許されました。

1731年、19歳の時に、師である医学教授がラウラの語学と自然哲学への深い知識を見抜き、その能力を披露する催しを開きました。地元の一流学者たちが招待され、中にはランベルティーニ枢機卿（後の教皇ベネディクトゥス14世）もいました。彼の感銘を受け、1732年にはボローニャ科学芸術アカデミーの名誉会員に選ばれました。同年、大学と市議会の決定により、哲学の学位が授与されました。学位取得のための発表会では、物理学関連を中心とした49もの演題が取り上げられました。この時、大学で講義を行う権利も得ましたが、教授の許可が必要でした。

1738年、医師のジュゼッペ・ヴェラッティと結婚し、5人の息子と3人の娘をもうけました。

1745年、教皇ベネディクトゥス14世の後押しにより、科学アカデミーの正式な一員として迎えられました。しかし、大学の教壇に立つ機会はなかなか増えませんでした。1749年、自宅で実験物理学の講義を始めると、その講座は非常に盛況で、約20年間も続きました。

1776年、65歳になったラウラは、長年の実績が認められ、応用物理学の正教授の地位を授与されました。亡くなるまでの2年間、その職務を全うしました。

業績

ラウラ・バッシは、ボローニャ大学の「特認」教授という立場に甘んじることなく、自宅で講義を開き、ニュートン力学などの講義で高い評価を得ました。科学関連の著作は残していませんが、教師として多忙な日々を送りました。自宅と科学アカデミーの両方で、応用物理学、理論物理学、化学、数学の講義を40年以上も続けました。

講義録はほとんど残っていませんが、ボローニャ科学アカデミーには扱われたテーマの一覧が残されており、講義の3分の1は流体の研究に費やされていたことがわかっています。エミリー・デュ・シャトレが書いた物理学教本を講義で使用していました。

講義の傍ら、研究室で様々な実験も行いました。特に電気実験に関する研究に力を入れ、電気の持つ治療効果に着目し、夫の研究に貢献しました。夫ジュゼッペの電気療法に関する論文はヨーロッパ中に広まり、フランス語にも翻訳されました。ラウラと夫の実験は、電気研究の発展に大きく貢献しました。

ラウラは、ベンジャミン・フランクリンとほぼ同時代の1740年代に電気に関する実験を行っており、フランスの物理学者ジャン＝アントワーヌ・ノレやフランクリンと手紙を交わしていました。また、アレッサンドロ・ボルタとも交流がありました。

ラウラ・バッシは、その知性と才能、そして教育への情熱によって、科学の世界で女性が活躍する道を切り拓いた先駆者として、歴史に名を刻んでいます。

参考文献

* マルヨ・T・ヌルミネン 著、日暮雅通 訳『才女の歴史　古代から啓蒙時代までの諸学のミューズたち』東洋書林、2016年。ISBN 9784887218239

もう一度検索