ラウンドトリップタイム

ラウンドトリップタイム（RTT）とは

通信分野におけるラウンドトリップタイム（RTT）またはラウンドトリップディレイタイムとは、信号が送信元から宛先へ到達し、応答が返ってくるまでにかかる時間のことです。これは、閉じた回路で信号を伝送する際の経過時間、メッセージ（例えば、コンピュータネットワークにおけるTCPパケット）が送られて戻ってくるまでの時間、一次レーダーまたは二次レーダーシステムにおいて送信されたパルスが標的に届き、エコーやトランスポンダからの応答が受信機に返るまでの時間、など様々な形で現れます。

RTTは、双方向通信を必要とするシステムにおいて非常に重要な要素です。例えば、電話での会話や、TCPのように応答確認（ACK/NAK）を必要とするデータシステムでは、RTTが直接スループットに影響します。RTTの値は、数マイクロ秒（近距離での無線通信など）から、数秒（衛星通信を含む複雑な回線）まで、大きく変動します。

TCP通信におけるRTTは、セグメントの送信からそのACK受信までの時間を測定することで算出されます。このRTTは、ネットワークの遅延や通信媒体の特性に左右されます。

ラウンドトリップ遅延の削減

RTTは通信パフォーマンスに大きな影響を与えるため、その削減は重要な課題です。しかし、光速不変の法則により、物理的な距離に基づくRTTの短縮は困難です。そのため、RTTの削減には、主に以下の二つのアプローチが用いられます。

1. ラウンドトリップ回数の削減：通信の往復回数を減らすことで、遅延を減らします。
認証手続きの合理化：認証プロセスを迅速化し、通信開始までの時間を短縮します。具体的には、TCP接続開始時のハンドシェイクの簡略化（TCP Fast Open）や、TLSセッション開始の簡略化（TLS 1.3）などがあります。QUICは、UDPを使用することで、このオーバーヘッドを削減します。
リクエストなしでのデータ送信：サーバー側からリクエストを待たずにデータを送信します（プッシュ送信）。HTTP Pushなどがこの例で、ウェブページの表示に必要なリソースを、クライアントからのリクエストを待たずに送信します。緊急地震速報のセルブロードキャストも、この原理を利用しています。
通信エラーの許容：UDPのように、多少のデータ損失を許容し、再送要求をしないプロトコルを使用します。

2. 通信距離の削減：より近いサーバーとの通信により、遅延を減らします。
CDN（コンテンツデリバリーネットワーク）の利用：世界中に配置されたサーバーを利用することで、ユーザーは最も近いサーバーと通信できます。
TCPアクセラレーション：サーバーとクライアント間の通信を中継し、パケットロスが発生した場合に、サーバーまで再送を要求しなくても良いようにします。

関連事項

レイテンシ：データ転送における遅延時間全般。
* 応答[[時間]]：システムがユーザーの操作やリクエストに応答するまでの時間。

これらの要素は、通信システムのパフォーマンスを評価する上で、RTTと密接に関連しています。RTTの最適化は、これらの要素を改善することにもつながります。

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