ラガヴーリン蒸留所

ラガヴーリン蒸留所：アイラモルトの巨人

ラガヴーリン蒸留所は、スコットランドのアイラ島に位置する、世界的に有名なスコッチウイスキーの蒸留所です。そのウイスキーは「クマの抱擁」と形容されるほど、オイリーで重厚な味わいが特徴で、多くのウイスキーファンを魅了し続けています。

歴史

創業期：密造から合法へ

ラガヴーリンの歴史は、1742年に始まった密造に遡ります。アイラ島の湿地帯という地理的条件が密造に最適であり、周辺には多くの密造所が存在していました。1816年、ジョン・ジョンストンが周囲の密造業者と協力し、蒸留のライセンスを取得して合法的な蒸留所となり、その際に「ラガヴーリン」と名付けられました。この名前はゲール語で「水車小屋のある窪地」を意味します。

ピーター・マッキー時代：発展と軋轢

19世紀後半には、ジェームズ・ローガン・マッキーが蒸留所の所有者となり、彼の甥であるピーター・マッキーが蒸留所の経営を引き継ぎました。ピーターは、ブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」を発売し、その成功によってラガヴーリンは大きく発展しました。しかし、ラフロイグ蒸溜所との間で販売代理店契約を巡る訴訟や、ラフロイグの製法を模倣するために建設されたモルトミル蒸留所の設立など、様々な出来事がありました。

DCL社による買収後：安定と評価

ピーターの死後、ラガヴーリンはDCL社（現在のディアジオ社）に買収されました。その後、「クラシックモルト・シリーズ」の一員としてシングルモルトウイスキーが発売され、世界的なシングルモルトブームの火付け役となりました。

製造

伝統と革新の融合

ラガヴーリンの製造においては、伝統的な製法が守られています。麦芽はポートエレン蒸留所製のものを使用し、仕込み水は蒸留所背後のソラン湖の湧き水を使用します。発酵には木製のウォッシュバックを使用し、独特の風味を育んでいます。一方、蒸留においては、蒸気熱による間接式加熱やシェル&チューブのコンデンサによる冷却など、近代的な技術も導入されています。

独特の蒸留工程

ラガヴーリンのポットスチルは、くびれのないタマネギ型で、比較的背が高い形状をしています。また、蒸留時間が長いことも特徴で、これによりもろみが銅に触れる時間が長くなり、独特の風味が生まれると考えられています。ミドルカットは78～61%と長めで、特に下限が61度と低めであるため、スモーキーな味わいにつながるフェノール成分が多く抽出されます。

製品

ラガヴーリン16年：ブランドを代表する一本

ラガヴーリン16年は、ブランドを代表するボトルであり、「クラシックモルト・シリーズ」のアイラ島代表として1988年にリリースされました。そのオイリーで重厚な味わいは「クマの抱擁」と喩えられ、多くのウイスキーファンから愛されています。

多彩なラインナップ

その他にも、8年熟成の「ラガヴーリン8年」や、ペドロヒメネス・シェリー樽でフィニッシュされた「ラガヴーリン ディスティラーズ・エディション ダブルマチュアード」など、様々なラインナップがあります。

評価

ラガヴーリンのシングルモルトは、その品質の高さから世界中で高く評価されており、数々の賞を受賞しています。また、その独特の風味は、多くのウイスキー評論家や愛好家によって称賛されています。

ラガヴーリンは、アイラモルトの中でも特に個性的な存在であり、その深く複雑な味わいは、一度体験すると忘れられない印象を残します。ぜひ一度、その魅力を味わってみてください。

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