ラクテンチ別府ラクテンチケーブル線

別府ラクテンチケーブル線

大分県別府市の立石山中腹に位置する遊園地「ラクテンチ」への主要なアクセス手段として、株式会社ラクテンチが運行する鋼索鉄道、それが別府ラクテンチケーブル線です。別府湾を見下ろす景勝地で、急峻な斜面を克服し、開業以来多くの来園客を運び続けています。

路線概要

この路線の営業キロは0.3キロメートル（正確には253.5メートル）と短いながらも、山麓の雲泉寺駅（通称：ラクテンチ下駅）と山頂の乙原駅（通称：ラクテンチ上駅）の二駅間を結んでいます。軌間1067ミリメートルの単線ながら、2両の車両が途中で交換しながら走る交走式を採用。この短い区間には、最急558パーミル、最緩480パーミルという、日本のケーブルカーでも屈指の急勾配が存在します。

歴史

別府ラクテンチケーブルカーは、遊園地とともに1929年（昭和4年）、「別府遊園地索道」として産声を上げました。翌1930年（昭和5年）には「別府遊園鋼索鉄道」と改称しています。戦時下の1944年（昭和19年）には不要不急線として休止され、資材供出のため一時姿を消しましたが、1950年（昭和25年）に運行を再開。1954年（昭和29年）からは別府国際観光が経営を担いました。

その後、経営環境の変化により、2003年（平成15年）11月には岡本製作所に遊園地事業と共に譲渡され、「別府ワンダーラクテンチ」の一部となります。一時休止・改装を経て2004年（平成16年）3月に運行を再開しましたが、来園者数の減少から、2008年（平成20年）には事業撤退が表明され、閉園の危機に直面。事業譲渡交渉の不成立もあり、同年12月からは再び営業を休止しました。最終的には岡本製作所が自社での再開を決断し、2009年（平成21年）7月18日、「ラクテンチ」のリニューアルオープンに合わせて運行を再開。この際、車両の前面が犬と猫を模したデザインに変更され、話題となりました。

運営体制はその後も変更があり、2018年（平成30年）6月1日には、岡本製作所から分社化した株式会社ラクテンチが西石油グループに事業譲渡され、現在に至っています。

車両

現在の車両は、2009年のリニューアル時に犬（ドリーム号）と猫（メモリー号）のFRP装飾が施されましたが、これは2019年6月3日で終了。2020年8月からはデザインコンテストに基づいた新デザイン「遊びつくそう！ひみつきち」と「ラクテンチの思い出」に変更されています。

特筆すべきは、使用されている台車です。1951年製で、日本で現役稼働しているケーブルカー用台車としては最古級の歴史を持ちます。車体そのものは1974年に製造されたものに載せ替えられています。

運行形態

ケーブルカーは通常、20分間隔での運行で、所要時間は約3分です。多客期には臨時便が運行されます。遊園地の休園日（祝日や長期休暇期間を除く火曜日）は運休です。

利用方法と運賃

ケーブルカーの利用は、原則として遊園地の入園が必要です。山麓の「メインゲート」からの入場料（大人1300円など）にはケーブルカーの往復運賃が含まれますが、山頂の「乙原ゲート」からの入場料（大人1100円など）には含まれず、ここから入場してもケーブルカーは利用できません。

ただし、山頂側の乙原地区住民やその関係者は特例として、ケーブルカー運賃のみで乗車が可能です。これは、地域住民にとっての生活交通としても機能している側面を示しています。過去の運営時代には、別途入場料が必要な上で、片道300円として利用できた時期もありました。

駅

駅は正式には雲泉寺駅と乙原駅ですが、案内上は「ラクテンチ下駅」「ラクテンチ上駅」と通称で呼ばれています。山麓のラクテンチ下駅は、JR別府駅からバスまたはタクシーでアクセス可能です。

別府ラクテンチケーブル線は、急勾配を登るスリルや別府湾を望む眺望といった観光的な魅力に加え、波乱の歴史と日本最古級の台車を持つ特徴的な車両で知られています。遊園地へのアクセス手段でありながら、地域住民の足としても機能する、別府に根差した交通機関です。

* 別府ラクテンチ公式サイト

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