ラグタイム・ダンス

ラグタイム・ダンス

『ラグタイム・ダンス』（英：The Ragtime Dance）は、アメリカの作曲家スコット・ジョプリン（Scott Joplin, 1868年頃-1917年）が手掛けたピアノのためのラグタイム作品です。オリジナルは1902年に作曲・出版されましたが、その後1906年に改訂が加えられ、現在一般的に演奏され、聴かれているのはこの改訂版が多いとされています。ジョプリンは「ラグタイム王」と称され、『ジ・エンターテイナー』や『メイプルリーフ・ラグ』といった数々の名曲を残しましたが、本作も彼の比較的有名な作品の一つとして挙げられます。

この楽曲は、ラグタイム特有のシンコペーションを多用したリズムと、軽快で踊り出したくなるようなメロディが特徴です。ピアノ独奏曲として書かれましたが、その魅力的な旋律ゆえに様々な楽器編成に編曲されて演奏されています。中でも、金管五重奏のための編曲版は特に知られており、その演奏機会は少なくありません。英国の名門アンサンブル、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルのトロンボーン奏者を務めたジョン・アイヴソン（John Iveson）による編曲版は特に有名で、この編曲は日本の管楽アンサンブル愛好家の間でも広く認識されています。アイヴソン版の演奏は、日本の吹奏楽や金管バンドといったアンサンブル文化に少なからず影響を与えたとも言われています。

また、『ラグタイム・ダンス』はコンサートホールだけでなく、意外なメディアで使用され、多くの人々に親しまれています。

テレビ番組：かつてフジテレビ系列で放送されていた人気バラエティ番組『はねるのトびら』の中で展開されていたゲームコーナー「オシャレ魔女 アブandチェンジ」において、主要キャラクターである「オシャレ魔女 アブ」が登場する際のBGMとして使用されていました。番組の視聴者、特に若い世代にとってはこの楽曲を耳にする最初の機会となった人も多かったことでしょう。コミカルなキャラクターの登場シーンを彩る音楽として、楽曲の明るい雰囲気が効果的に使われました。

メダルゲーム：ゲームセンターに設置されているメダルゲームのBGMとしても頻繁に使用されていることでも知られています。特に、かつてシグマ社（現アドアーズ）が製造・販売していた機種に多用されていました。例えば、1997年に登場したメダルゲーム『エイリアンアクション』では、プレイヤーが高配当を獲得した際の特別な演出時にこの曲が流れる設定がありました。具体的には、最大ベット数（5枚）でプレイ中に、ワイルドシンボルが3列以上揃った場合や、特定の絵柄（エイリアン、バード）が4列揃って500枚以上の役が成立した場合などに、高揚感を煽るBGMとして『ラグタイム・ダンス』が使われました。このように、ゲームセンターの賑やかな環境の中でも、この楽曲の陽気なリズムは多くのプレイヤーに親しまれています。

クラシック音楽の枠を超えて、様々な形で人々の耳に届く『ラグタイム・ダンス』は、スコット・ジョプリンの作品の中でも特に多岐にわたる魅力を放っている楽曲と言えるでしょう。この楽曲の楽譜は、国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）などで公開されており、興味のある方は自由に閲覧・入手することが可能です。

もう一度検索