ラグドール物理

ラグドール物理とは



ラグドール物理とは、主にビデオゲームで使用される物理法則の一つで、キャラクターが死亡したり気絶したりした際に、その人体の動きをシミュレーションする技術です。従来のゲームでは、キャラクターの動きは事前に用意されたアニメーションに依存していましたが、ラグドール物理では、人体剛体の集合として扱い、リアルタイムで物理シミュレーションを行うことで、より自然で予測不能な動きを表現します。

ラグドール物理の仕組み



ラグドール物理では、人体は「ラグドール」と呼ばれる、スケルタルアニメーションシステムのボーン(骨格)に紐付けられた剛体として扱われます。これらの剛体は関節で連結され、互いに拘束関係にあります。この拘束関係がラグドールの関節部の動きに影響を与え、ある程度リアルな人体の動きを再現します。しかし、筋肉神経などの要素は考慮されないため、関節が不自然な方向に曲がったり、キャラクターが予期せぬ方向に吹っ飛んだりするなど、コミカルな動きになることもあります。

ラグドール物理の歴史



初期のゲームでは、キャラクターの動きは事前に作成されたアニメーションに限定されていました。しかし、ハードウェアの性能向上に伴い、リアルタイムで物理シミュレーションを行うことが可能になり、ラグドール物理が導入されるようになりました。ラグドール物理が初めて使われたゲームは『Jurassic Park: Trespasser』(1998年)とされていますが、ゲームの出来が不評だったため、あまり評価は得られませんでした。

その後、ラグドール物理は多くのゲームに採用され、特に格闘ゲームでキャラクターが倒れる際や、ファーストパーソンシューティングゲームで敵キャラクターが倒れる際の動きなどに活用されました。また、レーシングゲーム『FlatOut』では、吹っ飛んだドライバーにラグドール物理が適用されるなど、様々なジャンルで使われています。

近年のラグドール物理



2000年代後半からは、筋肉神経などの生体運動力学的なアプローチを取り入れた物理エンジンが登場し、ラグドール物理はさらに進化しました。NaturalMotion社のEuphoriaなどの物理エンジンは、事前にモーションを制作しなくても、リアルタイムで自然な動きを生成することが可能です。この技術は、『Grand Theft Auto IV』や『Max Payne 3』などのゲームで使用されています。

レーティングへの対応



ラグドール物理は、その表現が時に暴力的と見なされることがあるため、一部の国ではレイティング機関によって削除が求められることがあります。例えば、ドイツでは、『F.E.A.R.2』などのゲームでラグドール物理が削除されました。また、ゲームによってはオプションでラグドール物理のオン・オフを切り替えられるものもあります。『コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア』日本語版では、ラグドール物理をオフにするオプションが用意されています。

まとめ



ラグドール物理は、ゲームにおけるキャラクターの動きをよりリアルで自然なものにするための重要な技術です。初期のコミカルな表現から、近年ではよりリアルな表現が可能になり、様々なジャンルのゲームで使用されています。今後も技術の発展とともに、ゲームにおけるラグドール物理の表現はさらに進化していくことが期待されます。

関連項目



ゲームエンジン
物理演算エンジン

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