ラジェンドラ・ビクラム・シャハ

ラジェンドラ・ビクラム・シャハ（Rajendra Bikram Shah）は、1813年12月3日にネパール王国のゴルカ朝第4代君主ギルバン・ユッダ・ビクラム・シャハの息子として生まれました。

1816年、父王ギルバン・ユッダが死去したことに伴い、わずか3歳で王位に就きました。幼くして即位したため、当初は摂政による統治が行われました。

親政を開始してからも、国内の政情は安定しませんでした。特に1842年には、皇太子スレンドラの素行が問題視され、これを理由にカトマンズで民衆が蜂起し、国王の統治権停止を要求する事態に発展しました。この窮地に対し、ラジェンドラ王は困惑し、第二正妃であるラージャ・ラクシュミー・デビーに全ての権限を委任するという異例の決定を下しました。この出来事を契機として、ネパール国内では実に数年にわたる激しい権力闘争が幕を開けることとなりますが、王自身は政局の表舞台から退き、その間はほとんど政治的な影響力を持たない存在となりました。

政争が続く中、1846年9月には凄惨な王宮大虐殺事件が発生しました。当時の首相ファッテ・ジャンガ・シャハをはじめとする多くの重臣たちが次々と殺害され、権力の空白が生まれました。この混乱に乗じて、ジャンガ・バハドゥル・クンワルが新たな首相の座に就任し、急速にその影響力を拡大させていきました。

立て続けに起こる事件の中でも、同年10月に発生したバンダールカール事件は、王の運命を決定づけることとなりました。この事件の後、ラジェンドラ王は第二正妃と共に隣国インドへの亡命を余儀なくされます。

王の亡命中に、首相となったジャンガ・バハドゥル・クンワルは姓をラナと改め、その強大な権力を基盤として、彼の子孫が代々ネパールの宰相として国を支配する体制を確立しました。これにより、ネパールの王家であるゴルカ朝は、1951年までの104年間にわたり、実質的な統治権を失うこととなります。この長期にわたる宰相家による支配は「ラナ家の支配」と呼ばれています。

ラジェンドラは亡命先のインドから、失地回復を目指しました。1847年、彼はジャンガ・バハドゥル打倒のために兵を挙げ、ネパールへの帰還を図ります。しかし、その軍勢はジャンガ・バハドゥルによって打ち破られ、ラジェンドラ自身も捕らえられてしまいました。

逮捕されたラジェンドラは、バクタプルに設けられた邸宅に投獄され、その後、生涯をその地で過ごすこととなりました。一時期、カトマンズにあるハヌマン・ドーカ宮殿に移送されたこともありましたが、再びバクタプルへ戻されました。彼はそこで幽閉されたまま、政治の舞台に戻ることはありませんでした。

そして、1881年7月10日、ラジェンドラ・ビクラム・シャハは、幽閉先のバクタプルにて70歳で死去しました。彼の治世は、ネパール王権が実権を失い、後の歴史に大きな影響を与えるラナ家支配の時代へと繋がる激動の時期でした。

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