ラジオきらっと

ラジオきらっと：科学万博を彩った幻のラジオ局

1985年、茨城県つくば市で開催された国際科学技術博覧会（科学万博、つくば'85）の会場に、期間限定で開設されたAMラジオ局「ラジオきらっと」。正式名称は「財団法人国際科学技術博覧会協会所属筑波放送試験局」であり、科学万博放送局とも呼ばれました。

開局の背景

科学万博の会場は、最寄りの国鉄常磐線「万博中央駅」から約13kmと離れており、来場者はシャトルバスや自家用車での移動が必須でした。ピーク時には1日20万人もの来場が見込まれ、深刻な交通渋滞が予想されたため、交通情報を提供するラジオ局の設置が急務となりました。当時のカーラジオはAMが主流であったため、AM放送として開局。運営は文化放送が受託しました。

法令上の制約と運用

当時の法令にはイベント放送局の規定がなく、放送試験局（現在の地上基幹放送試験局）として開局せざるを得ませんでした。平壌放送との混信を避けるため、受信エリアは送信所を中心とした半径20kmに限定されましたが、そのユニークな存在感は全国のリスナーやラジオマニアの間で話題となり、北海道から九州まで受信報告が届くほどでした。

放送内容とパーソナリティ

1985年3月17日から9月16日まで、科学万博の会期中に放送されました。番組は、15分ごとの交通情報を軸に、パビリオン情報、イベント中継、音楽などで構成され、地域放送局出身者5名（小森法孝、長谷川洋子、塩崎純子など）が専任アナウンサーを担当。文化放送の月岡逸弥も随時参加しました。

運営上の困難

科学万博協会は放送設備に関するノウハウが不足しており、設備は不十分で使いづらい点が多々ありました。放送機器やレコードは文化放送からの持ち込みやメーカーからの借用で対応し、標準時計や時報装置もなかったため、文化放送から中継回線で送出された時報音を使用しました。スタジオは防音が不十分で、隣室の音や屋外の騒音、ひょうが屋根を打つ音までもが放送に影響を与えました。予備の放送設備や送信機も存在せず、送信所は無人運用であり、停電時には手動で自家発電設備を操作する必要がありました。そのため、停波事故も発生しました。

放送終了後

放送終了後、放送設備はAMステレオ放送の実験局「BTAステレオ実験」として活用されました。呼出符号のJO2Cは使用せず、放送技術開発協議会（現：電波産業会）中波ステレオ放送委員会が開設し、文化放送が運用しました。また、同期中継のテスト用に中継局「BTAステレオ実験2」も運用されました。

まとめ

「ラジオきらっと」は、科学万博という特別な場所で、交通情報という重要な役割を担いました。その運営には多くの困難が伴いましたが、個性的な番組と全国からのリスナーの支持を集めました。短期間の放送でしたが、多くの人々の記憶に残る特別なラジオ局でした。

参考資料

『エレクトロニクスライフ』1985年4月号（日本放送出版協会）
中波ステレオ放送技術検討 放送技術開発協議会（現：電波産業会）
* 高木誠利 北尾トロのそのお仕事、どうですか?第二回（飛鳥新社）

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