ラストイニング

ラストイニング―私立彩珠学院高校野球部の逆襲

『ラストイニング―私立彩珠学院高校野球部の逆襲』は、神尾龍（原作）、加藤潔（監修）、中原裕（作画）による野球漫画で、2004年から2014年まで『ビッグコミックスピリッツ』（小学館）で連載されました。2010年には、第1回サムライジャパン野球文学賞ベストナインを受賞しています。

概要

この作品は、主人公が監督として高校野球の舞台に立つことで、試合だけでなく、高校野球の裏側にある様々な人間模様やドラマを描き出しています。緻密に練り込まれた練習方法や戦術が特徴で、努力や根性だけでなく、理論に基づいたアプローチで勝利を目指す姿勢が魅力です。中原裕は、ありがちなスポ根漫画ではなく、実力と分析に基づいた戦略が不可欠であると考え、作品に反映させました。

あらすじ

物語は、インチキセールスマンとして生計を立てていた鳩ヶ谷圭輔が、ある事件をきっかけに彩珠学院高校野球部の監督に就任するところから始まります。かつて甲子園で初出場初優勝を果たした名門校も、今では弱小チームに成り下がり、学校経営も悪化の一途を辿っていました。

経営監査を任された美里ゆり子は、野球部を不良債権として取り潰そうとしますが、校長の狭山滋明は「来年の夏までに甲子園に出場」することを条件に野球部の存続を理事長に取り付けます。そして、白羽の矢が立ったのが、13年前に彩学のキャプテンだった鳩ヶ谷でした。

過去に審判への暴力事件を起こした鳩ヶ谷は、監督就任後、彩学ナインをD（ドッグ）、C（キャット）、M（モンキー）の3タイプに分類し、個性的な指導を開始。元高校球児の大宮剛士や留学生のスティーブ・ストローターをチームに加え、彩学野球部は見事生まれ変わります。

春の県大会でベスト16入りを果たし、夏のシード権を獲得した彩学。しかし、夏の大会直前にエースの日高直哉が故障してしまうというアクシデントが発生。苦しみながらも初戦を突破し、3回戦では名門・春日野大栄高校を撃破。その後も瑞雲高校、埼玉栄冠高校、武蔵体育大学付属高校といった強豪校を次々と破り、準決勝では安政大付属高校を破って、ついに夏の埼玉地区予選決勝へと駒を進めます。

決勝の相手は、優勝候補筆頭の聖母学苑。超高校級投手・明石慎之介を擁する強豪に苦戦を強いられますが、延長10回の激闘の末、彩学は見事勝利。甲子園出場を決めます。

しかし、喜びも束の間、学校の売却先が部活動の全廃を予定していることが判明。彩学野球部は、甲子園で勝ち進み、学校を救うために全国制覇を目指すことになります。

甲子園では、初戦で地元・兵庫県代表の湊川商工を破り、2回戦では大分県代表の大豊高校を下します。3回戦では東東京代表の帝都大学第一高校と対戦。エース日高の故障が発覚し、チームは苦境に立たされますが、控え投手の活躍で辛くも勝利。

準々決勝では、香川県代表の興洋学園を破り、準決勝に進出。大阪府代表の難波南洋高校と対戦しますが、善戦及ばず敗れ、ベスト4に終わります。

甲子園終了後、彩学ナインの活躍が認められ、学校法人購入の申し入れが相次ぎ、帝都大学付属彩珠学院高等部として再出発することになります。鳩ヶ谷は、学校法人が購入したブラジルの野球指導施設「SBA（サイガク・ベースボール・アカデミー）」の最高責任者として転身し、新たな挑戦を始めるのでした。

物語の最後は、鳩ヶ谷がかつての名門校からの監督就任の誘いを受け、「ゴキゲンだわ…」と呟くシーンで締めくくられます。

主な登場人物

鳩ヶ谷圭輔：彩珠学院高校野球部監督。型破りな指導でチームを改革する。
毛呂山豊：彩珠学院高校野球部部長。鳩ヶ谷をサポートする。
日高直哉：彩珠学院高校のエース。プライドが高く、当初は鳩ヶ谷と対立する。
八潮創太：彩珠学院高校のキャッチャー。洞察力に優れ、チームを支える。
大宮剛士：彩珠学院高校の外野手。抜群の打撃センスを持つ。
滑川順平：彩珠学院高校のキャプテン。真面目な性格でチームをまとめる。
上福岡徹：彩珠学院高校の外野手。かつてはレギュラーだったが、挫折を味わう。
川口智彦：彩珠学院高校の一塁手。長身で、打撃力もある。
大井克豊：彩珠学院高校の二塁手。俊足で、チームを盛り上げる。
蓮沼哲也：彩珠学院高校の遊撃手。ムードメーカー的存在。
入間博之：彩珠学院高校の外野手。貴重な左打者。
岩槻雅司：彩珠学院高校の外野手。器用な選手。
栗橋友司：彩珠学院高校の外野手。分析担当としてチームを支える。
スティーブ・ストローター：彩珠学院高校の投手。留学生で、独特な投球フォームを持つ。
大宮詩織：彩珠学院高校のマネージャー。毒舌だが、面倒見が良い。
狭山滋明：彩珠学院高校の校長。かつての優勝チームのキャプテン。
* 美里ゆり子：彩珠学院高校の経営監査室マネージャー。当初は野球部を潰そうとしていたが、次第に理解を示すようになる。

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