ラチェットレンチ

ラチェットレンチとは

ラチェットレンチは、ラチェット機構を利用したレンチの一種で、ボルトやナットを効率的に締めたり緩めたりする際に使用されます。ラチェット機構によって、レンチが一方向にのみ回転し、逆回転時には空回りする特徴があります。この機構により、レンチをボルトやナットから取り外すことなく、連続して作業を進めることが可能です。これにより、作業効率が大幅に向上します。

ラチェットレンチの特徴

- 回転方向の制限: ラチェット機構により、レンチは一方向にのみ回転します。逆回転時は空回りするため、ボルトやナットを締め付ける際に連続した作業が可能です。
- 多様なサイズ対応: 回転方向を切り替えられるタイプでは、表裏で異なるサイズのボルトやナットに対応できるものがあります。また、1本で複数のサイズのソケットを備えたモデルも存在します。
- フリーサイズソケット: 近年では、様々なサイズのボルトやナットに対応できるフリーサイズのソケットを備えた輸入品も登場しています。

ラチェットレンチの歴史

ラチェットレンチの発明には、特定の人物が関連付けられる決定的な証拠は長らくありませんでした。初期のソケットはチューブから作られており、締め付けトルクに耐える強度の確保が課題でした。その後、鋼製のソケットが登場し、より強力な締め付けが可能となりました。

初期のラチェットレンチ

- Zelotes W. Averyの特許: 1847年にZelotes W. Averyがラチェットレンチの特許を出願しましたが、独創的なアイデアではないとされ、特許は登録されませんでした。しかし、彼のデザインは後の製品に影響を与えたと考えられています。
- J. J. Richardsonの特許: 1864年には、J. J. Richardsonが「レンチの改善」に関する特許を取得しました。

スナップオンソケットレンチの発明

1920年代には、ソケットとハンドルを分離して様々な組み合わせで使用できるスナップオンのソケットレンチが発明され、利便性が大幅に向上しました。

ロバート・オーウェンの発明説

1913年にロバート・オーウェン・ジュニアがラチェットレンチを最初に発明したという説もあります。

ラチェットレンチの種類

ラチェットレンチは、使用場所や用途に応じて様々な種類があります。

建設用ラチェットレンチ

建設現場では、ボルトの締め付けだけでなく、鉄骨の穴を合わせるためのシノと呼ばれる機能が付いたものが一般的です。鳶職の常用工具として使用されています。近年では、海外での生産も増えています。

- 多様なソケット: 両口、片口、ロングソケット、薄型ラチェットレンチなど、様々なソケット形状があります。
- 落下防止対策: 1987年以降、工具落下防止対策として、落下防止具を取り付けるための穴が本体に追加されています。

電設用ラチェットレンチ

電柱の配線作業では、複数のサイズのボルトやナットに対応するため、ソケット内に小さいサイズのソケットを組み込んだタイプが使用されます。絶縁仕様になっているものが多く、電力会社認定商品となっているものもあります。

- 板ラチェットレンチ: 弱電工事では、小型軽量な板ラチェットレンチが普及しています。

水道本管用ラチェットレンチ

水道本管のフランジ接続に使用されるレンチで、「本管レンチ」とも呼ばれます。泥水のある場所で使用されることも多いため、土が入りにくい構造になっています。スライド式ハンドルやトルクレンチ機能付きのモデルもあります。

回転方向切替機構の種類

ラチェットレンチの回転方向切替機構には、主に以下の3種類があります。

- ピン式: ピンを押すことで回転方向を切り替えます。作業中にピンが押されて空回りすることがあるため、注意が必要です。
- 爪式: レバー操作で回転方向を切り替えます。作業中に障害物が当たっても、爪が外れる心配が少ないです。
- カム式: ワンウェイクラッチ機構を利用しており、回転方向が固定されているタイプです。軽トルク作業に適しています。

主なメーカー

ラチェットレンチの主なメーカーとしては、以下の企業が挙げられます。

- （株）スーパーツール
- TOP トップ工業（株）
- MCC（株）松阪鉄工所
- LOBTEX（株）ロブテックス
- NAGAKI
- MITOLOY
- MARVEL
- 板橋機械工業
- NGK（株）永木精機

脚注

[参考文献]

- 『正しい作業工具の使い方』7.シノ付きラチェットレンチ、全国作業工具工業組合発行