ラティウム戦争

ラティウム戦争：ローマの覇権とラティウム同盟の終焉

ラティウム戦争は、古代イタリア半島において、共和政ローマと近隣ラティウム都市連合との間で発生した戦争です。英語ではLatin Warと呼ばれ、紀元前5世紀と4世紀にそれぞれ第一次と第二次が勃発しました。両戦争はローマの歴史、特にその拡大と政治体制に大きな影響を与えました。

第一次ラティウム戦争（紀元前498～493年）：伝説と現実

第一次ラティウム戦争は、ローマ建国神話の時代と重なり、伝承と伝説が混在する時期の出来事です。ローマ王タルクィニウス・スペルブスが追放された後、エトルリア出身の彼を支援するラティウム人がローマに敵対し、戦争が勃発したと伝えられています。

主要な戦闘はレギッルス湖畔で発生しました。ローマ軍は独裁官アウルス・ポストゥミウス・アルブスとティトゥス・アエブティウス・エルウァの指揮下で、ラティウム連合軍（トゥスクルムの王子オクタウィウス・マミリウス、タルクィニウス、その息子セクストゥスら指揮）と激突しました。激戦の末、ローマ軍の勝利に終わり、ポストゥミウスは「レギッレンシス」の称号を得ました。タルクィニウスはローマへ戻ることなく死去したとされています。レギッルス湖畔の戦い後も戦闘は続きましたが、紀元前493年に停戦に至りました。この戦争は、ローマの建国神話と現実の歴史が複雑に絡み合った、謎の多い戦争と言えるでしょう。歴史家の記述には、誇張や伝説が含まれている可能性も考慮する必要があります。

第二次ラティウム戦争（紀元前340～338年）：ローマの台頭とラテン市民権

第二次ラティウム戦争は、ローマの台頭を背景に、ラティウム同盟の自立運動から始まりました。ラティウム同盟側は、ローマと対等の条件で国家連合を結成することを提案しましたが、ローマ元老院はこれを拒否しました。これにより、ラティウム同盟はローマに宣戦布告、戦争に突入します。

この時、ローマはサムニウム人との戦争（第一次サムニウム戦争）を終えたばかりでしたが、ラティウム戦争開始前に和議を締結していました。ラティウム人の中でも、ラウレンテス族や一部のカンパニアの騎士階級は、パエリグニ族の支援を受けたローマ側に加勢しました。戦争はイタリア半島各地で展開されました。サムニウム地方、フキネ湖周辺、そしてカンパニア地方のウェスウィウス山近郊で主要な戦闘が繰り広げられました。

ウェスウィウスの戦いで、ローマ軍は執政官ティトゥス・マンリウス・インペリオスス・トルクァトゥスとプブリウス・デキウス・ムスの指揮の下、ラティウム同盟軍とカンパニア軍を撃破しました。マンリウスは軍規を厳格に執行し、デキウス・ムスは自らの命を捧げて勝利を祈願したと伝えられています。さらに、トリファヌムの戦いでもローマ軍が勝利を収め、ラティウム軍はカンパニア地方から撤退しました。

一連の敗北の後、ラティウム同盟は解体、ローマの影響下に置かれました。多くのラティウム都市はローマ化され、一部にはローマの行政官が置かれ、ローマの植民市となりました。そして、ラティウム同盟民には、ローマ市民権とは異なるが一定の権利を有する「ラテン市民権」が付与されました。この戦争の結果、ローマの支配はイタリア半島に拡大し、その政治的・軍事的な覇権を確固たるものにしたと言えるでしょう。 第二次ラティウム戦争の後、およそ10年後にはサムニウム人との戦争が再び勃発しました。ローマの拡大と周辺勢力との関係は、依然として不安定な状況にあったことを示しています。

参考文献
ティトゥス・リウィウス『ローマ建国史』

関連項目
ローマ市民権
* サムニウム戦争

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