ラティフ・ヤヒア

ラティフ・ヤヒア: 自称影武者の著作家

ラティフ・ヤヒア（Latif Yahia）は1964年6月14日にイラクで生まれ、著作家として知られる人物である。彼はイラン・イラク戦争に従軍した元戦闘員でもあり、自らの経歴を語る際に特に注目されるのが、イラクの独裁者サッダーム・フセインの長男であるウダイの影武者であったという主張である。しかし、この主張には複数のジャーナリストから疑問が呈されている。

経歴の概要

ヤヒアはクルド人の血を引く。彼によれば、イラン・イラク戦争の勃発後にウダイの影武者としての役割を引き受けることになったという。ヤヒアはウダイよりも4日早く生まれており、23歳のときに大統領宮殿に招かれた際、ウダイとはかつて学校での同級生であったことを再認識した。彼は、容姿が似ているとのことからウダイの影武者（fedai）として、身の危険を避けるためにウダイとして公に出る役割を命じられた。

最初はこの役割を拒んだが、独房に囚われることになり、結果的にヤヒアは影武者の役割を受け入れた。其後、彼は6か月にわたってウダイの話し方や振る舞いを模倣する訓練を受け、容貌をより一層似せるために整形手術や歯科矯正も行った。イラクがクウェートを侵攻した際、ヤヒアは士気を高めるために、ウダイとしてイラク軍部隊の前に立った。

その後、ヤヒアとウダイの関係は悪化し、ウダイが興味を寄せていた女性が実はヤヒアに心を寄せていたことから、問題が生じた。ウダイは怒りを露わにし、ヤヒアを撃ち、軽傷を負わせた。ヤヒアは命令に背いて女性を守ろうとしたことから、逃亡するも、クルド人の軍事組織ペシュメルガに間違われて捕らえられた。正体が明らかになると解放され1992年にオーストリアへの亡命を果たした。

その後の人生には波乱が待ち受けており、1997年にはノルウェーでの事件を起こし逮捕される。裁判を前に釈放され、ドイツとアイルランドを転々としたという。

経歴への疑義

ヤヒアが影武者であったという主張は、ジャーナリストたちによって強く疑われている。『アイリッシュ・タイムズ』の記者ヨーン・バトラーは、ヤヒアの主張に矛盾が多く、事実確認が難しいと指摘している。2011年には、彼の書籍『デビルズ・ダブル』のプロモーションの前に行われた取材で、ヤヒアの物語が信じがたいものであると評されている。

また、ヤヒアの元妻は、ヤヒアがかつて使っていた名前がハーリド・アル・クバイシであり、影武者の話は結婚後に耳にしたものであったと話している。さらに、ウダイの知人たちからは、ウダイに影武者がいたという証言は否定されており、医師や元CIA職員も同様の意見を持つ。彼らは、ヤヒアの主張は信憑性に欠けるものであると強調している。サッダーム・フセイン自身も、影武者の存在を否定したとされている。

映画と著作

ヤヒアの人生を描いた映画『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』は、2011年に公開され、リー・タマホリが監督、ドミニク・クーパーが主演した。また、ナショナルジオグラフィックの番組『Locked Up Abroad』でも彼が特集されている。彼の著書には『I was Saddam's Son』や『The Devil's Double』があり、いずれも自身の経験に基づいた内容であるが、その真偽には多くの疑問が残る。

ラティフ・ヤヒアの経歴と著作は、彼の人生の一部として語り継がれているが、彼の真実性についての議論は今も続いている。

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