ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス

ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス（Rafael Frühbeck de Burgos）は、1933年 9月15日にスペインのブルゴスで生まれ、2014年 6月11日に亡くなった国際的に活躍した指揮者です。本名はラファエル・フリューベックといい、「デ・ブルゴス」は「ブルゴス出身の」を意味する添え名として用いられました。

人物と軌跡

1933年に生まれたフリューベックは、ドイツ人の父とドイツ系スペイン人の母を持ち、そのキャリアはスペインとドイツの両国に深く根差していました。音楽教育はまずスペイン国内で始まり、ビルバオとマドリードの音楽院でヴァイオリンやピアノ、作曲を学びました。その後、ドイツのミュンヘン高等音楽学校へ留学し、指揮を専攻。ここでは優秀な成績を収め、権威あるリヒャルト・シュトラウス賞を授与されています。

指揮者としてのレパートリーは幅広く、特にフランス・スペイン音楽とドイツ・オーストリア音楽を得意としました。ヨーロッパや北米の主要オーケストラで要職を歴任しており、ドイツではベルリン放送交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ、ライン・ドイツ・オペラで音楽監督を務めました。また、故国スペインではスペイン国立管弦楽団の音楽監督を長期間務め、地元のビルバオ交響楽団では首席指揮者を務めました。海外ではウィーン交響楽団やモントリオール交響楽団でも音楽監督を務め、さらに欧米各地の多くのオーケストラに客演しました。アメリカ合衆国へのデビューはフィラデルフィア管弦楽団を指揮して実現しています。

録音活動

フリューベックは精力的に録音活動を行い、多くのレーベルから音源がリリースされています。彼の代表的な録音としては、メンデルスゾーンのオラトリオ『エリヤ』、モーツァルトの『レクィエム』、オルフの世俗的カンタータ『カルミナ・ブラーナ』、ビゼーのオペラ『カルメン』全曲、そしてファリャの管弦楽曲集などが挙げられます。特に、1997年にベルリン放送交響楽団とともに来日し、サントリーホールで演奏したブラームスの交響曲第1番のライブ録画は、後にDVD化され、高い評価を得ています。

日本での活動

日本においては、読売日本交響楽団と非常に密接な関係を築きました。初登場は1974年。1980年には同楽団の第4代常任指揮者に就任し、その後も首席客演指揮者、そして1990年からは名誉指揮者として長年にわたり指導にあたりました。読売日本交響楽団との公演回数は合計169回に及びます。彼の演奏の中でも特にスペイン音楽は高く評価され、しばしばアンコールで演奏されたヒメネスのサルスエラ『ルイス・アロンソの結婚』間奏曲は、彼の代名詞と言えるほど聴衆に親しまれました。日本での最後の公演は、2012年の読売日本交響楽団との演奏会でした。

晩年と逝去

2012年からはデンマーク国立交響楽団の首席指揮者に就任していましたが、体調の悪化により、2014年6月4日に指揮活動からの引退を発表しました。このニュースは日本でも2日後の6月6日に報じられました。引退にあたり、「癌に侵されており、主治医と相談した結果、今後一切の指揮活動を中止せざるを得ない結論に至りました。非常に残念ですが、プロフェッショナルとして活動を続けることが困難になった以上、引き際を認めざるを得ません」とのコメントを寄せています。引退表明からわずか5日後の2014年 6月11日、スペインのナバラ州パンプローナ市内の病院で、80歳でその生涯を閉じました。

フリューベック・デ・ブルゴスは、その多才さと幅広いレパートリー、そして特にスペイン音楽における貢献により、世界の音楽界に大きな足跡を残しました。

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