ラフム

ラフムは、バビロニア神話において重要な位置を占める神です。彼は、原初の水であるアプスーと、混沌の海を象徴するティアマトから生まれた最初の存在とされています。姉妹であるラハムとの間に、天空神アンシャルと大地神キシャルをもうけ、神々の系譜の始祖としての役割を果たしました。

ラフムの姿は、文献や изображенийによって様々に描写されます。ある時には巨大な蛇として、またある時には赤い帯を身につけ、6つの巻き毛を持つ男性として描かれることがあります。しかし、常にラハムと対になって描かれるのが特徴です。このことから、ラフムとラハムは、それぞれ単独の神格というよりも、原初の混沌とした状態、特に淡水と海水が混ざり合う場所の沈泥（シルト）を象徴していると考えられています。

シュメール時代には、ラフムは「泥」を意味する言葉であり、都市エリドゥにあるエンキ神を祀るアプスー神殿の門番に与えられる称号としても用いられました。これは、ラフムが単なる神名ではなく、特定の役割や状態を表す言葉としても機能していたことを示唆しています。象徴的な意味合いにおいては、ペルシャ湾の入り口付近にある、淡水（アプスー）と海水（ティアマト）が混ざり合う場所の泥質の島を指すこともありました。

興味深いことに、イエス・キリスト生誕の地として知られる「ベツレヘム」という地名の語源についても、ラフムとの関連が指摘されています。一般的には、ヘブライ語で「パンの家」を意味するとされていますが、一部の研究者は、カナン語のラフムがその語源の一部を構成している可能性があると主張しています。もしそうであれば、ベツレヘムという地名は、単に食料を意味するだけでなく、より根源的な、創造や誕生といった意味合いを含んでいるのかもしれません。

このように、ラフムはバビロニア神話において、単なる一神格を超えた、多様な意味を持つ存在です。原初の混沌、創造の源、そして文化的なつながりなど、様々な側面からその重要性を読み解くことができます。

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