ラブルスカ種

ラブルスカ種 (Vitis labrusca)

ラブルスカ種は、ブドウ科ブドウ属に属するつる性の低木植物です。北アメリカ大陸東部からカナダ南東部にかけて自生しており、カトーバやコンコードといった栽培品種があります。また、アガワム、アレキサンダー、キャンベル・アーリー、デラウェアなどは、ラブルスカ種と他のブドウ品種との交雑種です。

特徴

ヨーロッパブドウ（Vitis vinifera）との大きな違いとして、以下の点が挙げられます。

スリップスキン: 果実に圧力を加えると、果皮と果肉が容易に分離します。
巻きづる: 樹枝の節ごとに巻きづるが発生します。
狐臭: 最も特徴的なのは、「狐臭」と呼ばれる独特の香りです。これはコンコードブドウでよく知られており、土のような、甘い麝香のような香りがします。この香りはキツネとは関係ありませんが、アメリカの初期入植者には馴染み深いものでした。「狐臭」は、ヨーロッパブドウにはない香りを指す言葉として使われています。

果実の色は、ナイアガラのような白色やカトーバのようなピンク色を除き、黒ずんだ赤い色をしています。フェノール性化合物が豊富に含まれているため、風味の強いワインができます。成熟が進むと、果実は小花柄から容易に取れるようになります。果肉は柔らかく、果粒を指で挟んで押すと、果皮から果肉がボールのように剥けます。

樹勢は比較的弱く、樹の広がりも小さいです。葉は厚く、裏側には褐色または白色の毛が生えています。

歴史

歴史家のエドワード・ハイアムズとワイン専門家のジャンシス・ロビンソンによれば、11世紀にノルウェーのレイフ・エリクソンが発見したヴィンランドの海岸に自生していたのが、ラブルスカ種であった可能性があります。ヨーロッパ人が北アメリカ大陸に到達する前から、ラブルスカ種が自生していたことは広く知られています。

18世紀には、カール・リンネらによってアメリカブドウとして分類されました。19世紀には、ラブルスカ種は他のアメリカ原産のブドウと共にヨーロッパに持ち込まれましたが、その際にブドウの害虫であるフィロキセラも持ち込まれてしまい、ヨーロッパのブドウ畑は大きな被害を受けました（19世紀フランスのフィロキセラ禍）。

19世紀には、マサチューセッツ州コンコードのエフライム・ウェールズ・ブルが、野生のラブルスカ種の種子からコンコードを育成し、アメリカの重要な農業作物となりました。

栽培地域

ラブルスカ種は、ノバスコシア州からジョージア州、そしてミシシッピ川までの北アメリカ東海岸沿いに栽培されています。主な産地としては、オンタリオ州、ミシシッピ渓谷、ミシシッピ川デルタ地帯、オハイオ川流域、ニューイングランド南東部、ニューヨーク州のエリー湖周辺地域（AVA）、バージニア州、オハイオ州、ミシガン州などが挙げられます。

ヨーロッパブドウとは異なり、ラブルスカ種やその交雑種は、冬は寒く、夏は暑くて湿気の多い北アメリカ東部の気候条件によく適応します。ヨーロッパブドウの栽培地域は北アメリカ西部であり、ラブルスカ種にとっては乾燥しすぎた気候です。

病害虫耐性

ヨーロッパブドウと比較して、黒とう病やうどんこ病には強いですが、べと病や晩腐病にはやや弱いです。また、さび病、褐斑病、ブドウトラカミキリによる被害は、ヨーロッパブドウよりも多く見られます。生理障害としては、裂果は比較的少ないですが、果実が密集すると裂果が生じることがあります。縮果病はほとんど発生しません。ホウ素やマグネシウムの欠乏症が生じることがあります。

ラブルスカ種は、ブドウネアブラムシを含むブドウの病気に抵抗性がありますが、他のアメリカ原産のブドウ種（Vitis aestivalis、Vitis rupestris、Vitis berlandieriなど）ほどではありません。また、接ぎ木の親和性も高くないため、台木用品種としては使用されません。

「狐臭」について

カリフォルニア大学デービス校のブドウ栽培専門家であるA.J.ウィンクラーによれば、ヨーロッパブドウのマスカットを除き、ラブルスカ種はワイン用ブドウの中で最も顕著な香りを持っています。「狐臭」という言葉は、実際の動物（キツネ）とは関係なく、生のコンコードに代表される独特の、土のような、甘い麝香のような香りを指す言葉として使われています。1920年代には、「狐臭」をもたらす香り化合物であるアントラニル酸メチルが分離されました。

主な品種

コンコード
カトーバ
デラウェア
ナイアガラ
イザベラ

参考文献

(参考文献リストは、提供された情報に含まれていないため、省略します。)

関連項目

ブドウ品種の一覧
ブドウ栽培
ヨーロッパブドウ
ヤマブドウ

外部リンク

Vitis labrusca at the PLANTS national database - 生産地の地図も含まれています。(提供された外部リンクをそのまま使用)

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