レイフ・エリクソン

レイフ・エリクソン：伝説の航海者

レイフ・エリクソン（Leif Erikson, 古ノルド語: Leifur Eiríksson、970年頃 - 1020年頃）は、アイスランドで生まれたノルマン人の航海者、いわゆるヴァイキングです。彼は、赤毛のエイリークの息子として知られ、サガの記述によれば、ヨーロッパ人として初めてアメリカ大陸に到達した人物とされています。「幸運なるレイフ」という異名も持ちます。

アメリカでは10月9日が「レイフ・エリクソン・デー」として祝われていますが、クリストファー・コロンブスの「コロンブス・デー」に比べると、その知名度は低いのが現状です。

生涯と探検

レイフは、グリーンランドを発見し、最初の入植を試みたエイリークの長男としてアイスランドで誕生し、その後グリーンランドで育ちました。若い頃にはノルウェーを訪れ、ノルウェー王と会見してキリスト教に改宗、その教えをグリーンランドに持ち帰り教会を建てました。

サガによると、グリーンランドへの航海中に西へ流された者がおり、その情報から西に豊かな島があることを知ったレイフは、997年に探検航海に出ます。まず、漂流者のルートをたどり西へ向かい、「岩の国（ヘルランド）」と名付けられた岩だらけの地を発見します。次に南下し、「森の国（マルクランド）」と名付けた森林地帯を発見、さらに南下して小麦が自生する豊かな地を見つけました。彼らはそこを「ブドウの国（ヴィンランド）」と名付け、前線基地を設置し、グリーンランドへ帰還しました。これが西暦1000年頃の出来事とされています。

ヴィンランドは、サケが遡上する川があるなど、定住に適した土地に見えたため、数百人の入植者がグリーンランドから移住しました。しかし、先住民（レイフたちは「スクレリング」と呼んだ）との関係が悪化し、入植地は長続きせず、放棄されました。レイフ自身はその後、父の跡を継ぎ、グリーンランド西海岸の入植地の有力者として生涯を終えたようです。

探検の軌跡

彼らが到達したとされる地は、サガのみに記録されているため、その正確な位置は不明確です。しかし、ヘルランドはカナダのバフィン島、マルクランドはラブラドル半島であると考えられています。特に議論を呼ぶのがヴィンランドの位置です。

ヴィンランドはブドウが自生する土地とされていますが、ブドウの生育北限から考えると、北アメリカの南部、ニューヨーク州からメイン州にかけてのニューイングランド地方が候補に挙がっていました。しかし、近年、ニューファンドランド島でヴァイキングの定住地跡が発見されたことから、この島をヴィンランドとする説が有力になっています。また、ヴァイキングの活動が活発になった背景には、8世紀から13世紀頃の中世温暖期という気候条件も影響していたと考えられています。これにより、当時グリーンランド南部が森林に覆われていたという記録も説明できるものの、これらはあくまで推測の域を出ません。

歴史的調査と評価

ニューファンドランド島のランス・オー・メドー村で発見された定住地は、当初ファースト・ネーションズのものであると考えられていましたが、1960年代以降、ヴァイキングの女性が使う糸車や鍛冶屋の跡、イングランド製のボタンなどが発見され、ヴァイキングの遺跡であることが判明しました。この遺跡はランス・オー・メドー国立歴史公園として世界遺産に登録されています。

ヴィンランドの正確な位置は定かではありませんが、レイフ・エリクソンとアイスランド・グリーンランドのヴァイキングたちが、クリストファー・コロンブスの「発見」より約500年も前にアメリカ大陸に到達したことは確実です。しかし、彼らの到達情報はヨーロッパで広く共有されることはありませんでした。当時の慣習として、領有を宣言することもなかったため、レイフ・エリクソンは「アメリカ大陸の発見者」として広く認識されることはありませんでした。

登場作品

レイフ・エリクソンは、様々なフィクション作品にも登場しています。

ヴィンランド・サガ：幸村誠による漫画作品で、レイフは物語の重要な人物として描かれています。
小さなバイキング ビッケ：2019年のアニメ映画では、エイリークの息子レイフを名乗るキャラクターが登場します。

参考文献

山室静『赤毛のエリク記 : 古代北欧サガ集』冬樹社、1974年。

関連項目

アメリカ大陸の発見
* ケープコッド

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