ラブ・バトラー

リチャード・オースティン・バトラー：首相になれなかったリベラル保守の政治家

リチャード・オースティン・バトラー（Richard Austen Butler, 1902年12月9日 - 1982年3月8日）は、20世紀のイギリスを代表する政治家の一人です。サフラン・ウェルデンのバトラー男爵の称号を持ち、その政治キャリアは内務大臣、外務大臣など、数々の要職を歴任しました。保守党に所属しながらも、リベラルな思想を持ち続けたバトラーは、党内での立ち位置が難しい場面もありましたが、その政策手腕と知性は高く評価されました。

生い立ちと教育

1902年、イギリス領インド帝国のアトックで生まれたバトラーは、ケンブリッジ大学で教育を受けました。彼の父は植民地インド行政官であり、バトラー自身も幼い頃から国際的な視野を養いました。ケンブリッジ大学卒業後、彼は政治の世界へと足を踏み入れ、1929年にはサフラン・ウェルデン選挙区から庶民院議員に選出されました。

政治家としてのキャリア

バトラーの政治キャリアは、1930年代のインド担当省政務次官から始まり、労働省政務次官、外務政務次官と続きました。第二次世界大戦中には、教育庁長官として、1944年教育法を制定。この法律は、中等教育の義務化を定めるもので、戦後のイギリス教育に大きな影響を与えました。バトラー自身もこの教育法を自身の最大の功績と捉えていました。

戦後の野党時代には、保守党調査部で政策立案の中心的な役割を担い、アトリー内閣が進めた福祉国家の概念を保守党の政策に取り入れました。1951年に保守党が政権を奪還すると、バトラーは財務大臣に就任。朝鮮戦争の資金調達や、その後の経済成長に対応し、所得税の減税などを実現しました。しかし、景気悪化に伴う財政悪化から、金融引き締め政策を余儀なくされ、批判を浴びることになりました。

その後、王璽尚書、内務大臣、副首相、外務大臣と要職を歴任しましたが、首相の座には届きませんでした。1957年と1963年には首相候補として名前が挙がりましたが、党内の支持を得られず、いずれも実現しませんでした。特に1963年には、マクミラン首相の後継者として有力視されましたが、ヒューム伯が後継者に指名され、バトラーは外務大臣に留まりました。

バツケリズムと評価

バトラーの経済政策は、前労働党政権のゲイツケルの政策と連続性があるとして、「バツケリズム」と評されました。これは、保守党でありながらも、社会福祉政策を重視するバトラーの政治姿勢を象徴する言葉です。彼は、保守党内のリベラル派のリーダーとして、常に中道的な立場を維持し、現実的な政策を追求しました。

引退後

1965年、バトラーは一代貴族に叙され、貴族院議員となりました。また、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの学寮長に就任し、教育の世界に戻りました。1982年、79歳でその生涯を閉じましたが、彼の残した功績は、イギリスの政治史に深く刻まれています。

人物像

バトラーは、その知性と政策立案能力で知られていましたが、同時に、リベラルな政治姿勢から保守党内での支持を得られにくいという側面も持っていました。度々首相候補に名前が挙がりながらも、首相になることはありませんでしたが、彼の政治家としての才能は、多くの人々に認められていました。教育改革、経済政策、そして社会福祉政策への貢献は、イギリス社会に大きな影響を与え、彼の名前は、イギリスの政治史において特別な位置を占めています。

栄典

1965年 バトラー男爵
1954年 コンパニオン・オブ・オナー勲章
* 1971年 ガーター勲章

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