ラプソディ作品1 (バルトーク)

ラプソディ 作品1 Sz26 BB36

バルトーク・ベーラによって作曲された《ラプソディ》作品1は、彼の初期における重要なピアノ作品、およびそれを基にしたピアノと管弦楽のための作品です。1904年に完成し、カタログ番号作品1、Sz26が付与されています。ピアノ独奏版にはBB36a、ピアノと管弦楽のための版にはBB36bというベラ・パシュトーリによるバルトーク作品目録の番号が与えられています。

作品の背景と重要性

この《ラプソディ》は、バルトークが自身3度目の作品目録作成に着手した時期の作品であり、彼の芸術家としてのキャリアにおいて特筆すべき重要性を持っています。この頃、バルトークはルーマニアやハンガリーの民謡探索を自らの音楽活動の中心に据えることを決意しており、本作はそのような新たな創作期への転換期における作品として位置づけられています。民謡への深い関心は、その後のバルトークの作曲様式や芸術的な方向性を決定づける基盤となりました。

楽曲の特徴

本作は単一楽章で構成されていますが、評論家からは、対照的な性格を持つ二つの部分に分けられる緩やかな構成であると指摘されることがしばしばあります。楽譜上で明確な区切りが示されているわけではありませんが、聴覚的にはアダージョ・モルトとポコ・アレグレットという二つの主要な速度表示を持つセクションに大別できます。

音楽的な特徴として、ヴィルトゥオーゾ風の華麗なピアノ書法が挙げられます。これはフランツ・リストの音楽語法との関連で論じられることが多く、洗練されたテクスチュアや、対比的な楽想の巧みな配置が見られます。当時の拡大しつつあった中産階級に人気があった、いわゆる「ジプシー音楽」の影響を受けた旋律が効果的に用いられているのも本作の大きな特徴です。

楽曲は、非常に静かに開始するアダージョ・モルトのセクションから始まります。ここでは、音域の広いアルペッジョや複雑な和音が用いられ、奇想的な雰囲気を伴って展開されます。続いて、ポコ・アレグレットと指定されたセクションに入ると、おどけた調子を持った楽想が現れ、ジプシー風の旋律が導入されながら、次第に音楽は速度と活気を増していきます。ジプシー風の楽想が発展してクライマックスを迎えた後、冒頭のアダージョの静かで荘厳な楽想が堂々と回帰します。最後は、指示語perdendosi（消え入るように）が示す通り、静かに幕を閉じます。

版と改訂

《ラプソディ》は複数の版が存在します。1904年にピアノ独奏版として完成した後、バルトークは推敲と修正を重ね、1905年には自身の手によってピアノと管弦楽のための版、および2台のピアノのための版を発表しています。さらに1907年には、楽曲の長さをほぼ半分に短縮した第4の改訂版も制作されています。

本作は、後の妻となるシャーンドル・エンマ（当時コダーイ・ゾルターンの妻）に献呈されました。残念ながら、本作の草稿は現存していません。

演奏時間と楽器編成

オリジナルのピアノ独奏版およびピアノと管弦楽版の演奏時間は約20分です。1907年の短縮版は約12分となっています。

ピアノと管弦楽のための版の楽器編成は以下の通りです。

ピッコロ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2（B♭）
ファゴット2
ホルン4
トランペット2（B♭）
トロンボーン3
ティンパニ
タンブリン
シンバル
バスドラム
タムタム
弦五部

評価

1905年、バルトークは本作をパリで開催されたアントン・ルビンシテイン国際音楽コンクールの作曲部門に出品しましたが、残念ながら公的な評価を得ることはありませんでした。しかし後年の評論家たちは、この作品がバルトークのその後の独創的な様式への第一歩であったと位置づけています。また、本作が持つリスト風のヴィルトゥオーゾ性や表現力も評価の対象となっています。一方で、批評家のロバート・カミングスは、「このラプソディは巧みに作られているが、独創性に欠ける作品と評価されなければならない。また、曲の長さも正当であると言い切れない可能性がある。」と述べるなど、必ずしも肯定的な評価一辺倒ではありません。

発表当時は不遇であったものの、バルトークの民謡への傾倒と新たな創作様式の萌芽を示す作品として、彼の作品群の中で重要な位置を占める作品です。

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