ラプソディ第2番 (バルトーク)

概要

ラプソディ第2番 Sz. 89、90、BB96は、ハンガリーの作曲家バルトーク・ベーラが1928年にヴァイオリンとピアノのために作曲し、翌1929年には管弦楽伴奏版へと編曲された楽曲です。この作品は、一般的な委嘱によるものではなく、バルトーク自身の内発的な動機から生まれたとされており、その創作は完成まで誰にも知らされることなく秘密裡に進められました。作品は1937年に、ヴァイオリニストのセーケイ・ゾルターンに献呈されています。

この楽曲の誕生には興味深いエピソードがあります。セーケイ・ゾルターンの回想によれば、1928年のある日、彼がバルトークと会った際、バルトークは突然サプライズがあると告げました。それは、バルトークがヴァイオリンのための2つのラプソディの草稿を完成させており、まだ誰にも見せていないというものでした。そして、「ひとつは貴方のため、もうひとつはシゲティ（ヨゼフ・シゲティ）のためです。献呈して欲しい方を選んで構いませんよ」と述べたと言います。セーケイは最終的に第2番のラプソディを選びました。

ラプソディ第1番と共に、この第2番はバルトークがいかに農民の歌を素材として作曲に取り入れたかを示す好例となっています。バルトーク自身が語った手法によれば、既存の民謡旋律を基盤とし、それに伴奏や導入部、終結部などを付け加えるというものです。この際、新たに作曲された部分は、中心となる民謡素材を決して邪魔することのないよう、常に副次的で控えめな役割に留められることが徹底されています。

このラプソディは、伝統的なハンガリーのダンス音楽であるヴェルブンコシュに由来する、緩やかな楽章（lassú）と急速な楽章（friss）が対になった構成を採用しています。バルトークはこれ以前にも1904年のピアノのためのラプソディでこの形式を用いており、後には1938年の室内楽曲『コントラスツ』の第1楽章でも再びこの緩急対比を取り入れています。また、作曲者自身によって、これら2つのラプソディの各楽章は独立して演奏しても良いとされており、これは緩徐楽章、急速楽章のどちらにも適用されます。

楽曲構成

楽曲は前述の通り、緩やかな楽章と急速な楽章の2部構成となっています。

第1楽章

冒頭の「lassú」（緩やかに）と記された楽章は、3つの異なる主題が提示され、ロンド形式、あるいは5つの部分からなる歌曲形式（ABACA）のような構成で展開されます。主要な調性はニ短調ですが、頻繁に現れる5度の音が強調されることで、一種のイ調のフリギア旋法のような響きを帯びています。楽章はイ調のカデンツで閉じられ、「少し休んで次の楽章へ続く」（Fermata breve, poi attacca）という指示が付されています。

第2楽章

第1番と同様に、続く「friss」（急速に）楽章では、7つの民謡由来の主題が、形式にとらわれず、あたかも数珠つなぎのように連続して提示されます。これらの主題のうち6つは、トランシルヴァニア地方のロマ（ジプシー）によるヴァイオリン舞曲から採られたものです。残りのひとつ（5番目の主題「Uvevanẙi」）は、マラマロシュ地方、シェクレンツェ（Szeklence）という地域のルーシ人（ルシン人）の舞曲から採られています。これらの7つの舞曲の旋律が、様々な速いテンポで13の部分に分けられ、絶え間なく提示されることで、無窮動風の印象を与えます。楽章はト調で開始するものの、音楽の基盤は主にニ調に置かれており、最終的にニ調で力強く終結します。バルトーク自身、1929年に出版された初版の終結部分に必ずしも満足していなかったようで、その後実に7種類もの改訂版を試作し、最終的にその中から最も納得のいく一つを選んで出版しています。

ラプソディ第2番は、バルトークの農民音楽への深い傾倒と、それを独自の作曲技法と融合させる能力が見事に発揮された作品であり、そのユニークな成立経緯と共に、彼の創作における重要な位置を占めています。

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