ラプラタ沖海戦

ラプラタ沖海戦：ドイツ装甲艦の最期とイギリス海軍の勝利

1939年12月13日、南米ラプラタ川河口沖で、第二次世界大戦における重要な海戦の一つ、ラプラタ沖海戦が勃発しました。この戦闘は、ドイツ海軍の装甲艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」と、イギリス海軍の巡洋艦3隻による激戦として歴史に刻まれています。

戦いの背景：通商破壊作戦とイギリス海軍の追跡

イギリス海軍の圧倒的な戦力差の前に、ドイツ海軍は通商破壊作戦を第二次世界大戦における主要戦略としました。「アドミラル・グラーフ・シュペー」は、その先鋒として大西洋とインド洋で数々のイギリス商船を襲撃、撃沈していました。一方、イギリス海軍はドイツ艦の動向を監視するため、大西洋とインド洋に複数の捜索部隊を展開していました。

「アドミラル・グラーフ・シュペー」は、開戦直後から精力的に通商破壊活動を行い、多くの商船を拿捕、撃沈しました。その過程で、イギリス海軍は撃沈された船舶からの無線情報やわずかな手がかりをつなぎ合わせ、「アドミラル・グラーフ・シュペー」の位置を特定することに成功します。

イギリス海軍は、G部隊（重巡洋艦「エクゼター」、「カンバーランド」、軽巡洋艦「エイジャックス」、「アキリーズ」）を編成し、ラングスドルフ大佐率いる「アドミラル・グラーフ・シュペー」を追跡していました。G部隊司令官、ハーウッド准将は、装甲艦相手に単艦では勝利は難しいと判断し、巧妙な挟撃作戦を立案します。

激戦の展開：勇敢なる抵抗と致命的な損害

12月13日早朝、ラプラタ川河口沖で両艦隊は遭遇します。「アドミラル・グラーフ・シュペー」は、イギリス艦隊を軽巡洋艦と駆逐艦と誤認し、接近を試みましたが、すぐに相手が重巡洋艦と軽巡洋艦2隻であると気づきます。

交戦は、ドイツ艦からの先制攻撃で始まりました。しかし、「アドミラル・グラーフ・シュペー」は、イギリス巡洋艦の猛烈な反撃を受け、次々と被弾していきます。「アドミラル・グラーフ・シュペー」は機動力を活かした回避行動を試みましたが、イギリス巡洋艦の優れた機動力と射撃精度の前には無力でした。

特に、「エクゼター」は「アドミラル・グラーフ・シュペー」の集中砲火を受け、大きな損傷を負います。しかし、「エクゼター」は、艦の損傷にも関わらず、勇敢にも戦闘を続けました。戦闘中、「アドミラル・グラーフ・シュペー」は被弾により高角砲の砲手が蒸発してしまうという悲惨な事態も発生しました。

激しい砲撃戦の後、「アドミラル・グラーフ・シュペー」は煙幕を張り、戦場を離脱し、ウルグアイのモンテビデオ港へと逃走しました。

モンテビデオ港での決断：自沈と艦長の最期

モンテビデオ港に到着した「アドミラル・グラーフ・シュペー」は、損傷が激しく、修理には長時間を要することが判明しました。中立国であるウルグアイの港に停泊できる時間は限られており、イギリス海軍の圧力も高まっていました。

ラングスドルフ艦長は、様々な要因を考慮し、艦の拿捕を避けるため、自沈という苦渋の決断を下します。燃料系統の損傷も、自沈を決断する大きな要因の一つであったと考えられています。

12月17日、「アドミラル・グラーフ・シュペー」はモンテビデオ港を出港し、港外で爆薬が起爆され、沈没しました。ラングスドルフ艦長は、アルゼンチンに逃れたものの、2日後、自決しました。ヒトラーは、この自沈を激しく非難したと伝えられています。

戦いの余波と歴史的評価

ラプラタ沖海戦は、ドイツ海軍の通商破壊作戦に大きな打撃を与え、イギリス海軍の勝利に終わりました。戦闘に参加したイギリス巡洋艦は、その後の戦闘で幾つか損失しますが、この海戦での活躍は、イギリス国民に大きな勇気を与えました。

2004年には、「アドミラル・グラーフ・シュペー」の残骸の引き揚げ作業が始まりましたが、2009年に中止されました。この海戦は、第二次世界大戦における重要な出来事として、今日でも語り継がれています。その勇敢な戦闘と悲劇的な結末は、戦争の残酷さと、軍人たちの苦悩を改めて認識させてくれます。

もう一度検索