ラミイの戦い

ラミイの戦い：スペイン継承戦争における決戦

ラミイの戦いは、1706年5月23日に現在のベルギー、ブラバン・ワロン州のラミイで繰り広げられた、スペイン継承戦争における重要な戦闘です。イングランド・オランダ同盟軍とフランス・バイエルン軍が激突し、戦局を大きく左右する結果となりました。

戦闘前の状況

1704年のブレンハイムの戦いで、マールバラ公ジョン・チャーチルはプリンツ・オイゲンと共にフランス・バイエルン連合軍を破り、ドイツ戦線を立て直しました。しかし、1705年にはフランスのヴィラール公がモーゼル川方面に派遣され、マールバラ公の進軍を妨害。さらに、ヴィルロワ公が南ネーデルラントからオランダを襲撃したため、マールバラ公はネーデルラントへ引き返さざるを得ませんでした。ネーデルラントでは防衛線を突破し、ブラバントを転戦しましたが、オランダの反対により決戦は回避され、成果を上げられませんでした。

一方、イタリア戦線ではヴァンドーム公が攻勢に出て、オイゲン率いるオーストリア軍に勝利し、優位に立ちました。1705年は総じて同盟軍にとって不利な状況となりました。

1706年に入ると状況はさらに悪化し、ヴァンドームがオーストリア軍を破り、ヴィラールもモーデル川流域を平定。ネーデルラントでもヴィルロワが攻勢に出て、ティーネンへ向かいました。マールバラ公はこれに対し、フランス軍を迎え撃つ方針を固め、ラミイへと向かいました。

戦闘の経過

両軍は小ヘート川を挟んで対峙。フランス軍はオートル・エグリーズ、オフュ、ラミイ、タヴィエールに広範囲に布陣。対する同盟軍も小ヘート川右岸からムエーニュ川北岸まで軍を広げました。

マールバラ公は左右両翼に騎兵を配置しましたが、右翼の湿地帯を理由に部将達は反対しました。しかし、マールバラ公は聞き入れませんでした。

戦闘は砲撃戦から始まり、マールバラ公は右翼に攻撃を命じました。ヴィルロワは中央から左翼に移動し、右翼からも軍勢を割いて左翼を増強しましたが、これはマールバラ公の陽動作戦でした。マールバラ公は敵右翼を警戒させ、手薄になったところをイングランド軍左翼が攻撃、デンマーク騎兵が右翼を突破しました。マールバラ公とアウウェルケルク卿も進撃し、激戦を繰り広げました。

マールバラ公はさらに、右翼に控えていた騎兵を左翼に回し、戦力を集中させました。ヴィルロワは左翼に気を取られ、タヴィエールを奪われた上、右翼を破られ側面を危機に晒してしまいました。

中央ではフランスの近衛騎兵隊が奮戦しましたが、イングランド軍騎兵隊の増強により戦力差が開き、徐々に疲弊していきました。マールバラ公は騎兵隊を整列させ、右翼を破り、ヴィルロワとマクシミリアン2世は撤退を決意。同盟軍は追撃し、フランス軍に大損害を与えました。同盟軍の死傷者は3500、フランス軍の死傷者は降伏した兵も合わせて20000に上りました。

戦後

ヴィルロワはルーヴェン、ブリュッセルへと敗走しましたが、マールバラ公は追撃し、ルーヴェンを降伏させ、ブリュッセルに入りました。その後もネーデルラント各地を転戦し、ヘント、ブルッヘ、アントワープなどの諸都市を次々と陥落させ、ネーデルラントは同盟側の手に渡りました。

ラミイの戦いの影響は大きく、ドイツ戦線のヴィラールはヴィルロワに増援を送ったため攻勢に出られず、イタリア戦線でもオイゲンが勝利し、北イタリアを奪取しました。1706年は同盟側が優勢となりましたが、翌1707年には停滞を余儀なくされました。状況の打開は1708年のアウデナールデの戦いまで待たなければなりませんでした。

参考文献

友清理士『スペイン継承戦争 マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史』彩流社、2007年。

関連項目

ロイヤル・キャサリン (戦列艦・初代)

もう一度検索