ラルス・オンサーガー

ラルス・オンサーガー（1903年11月27日-1976年10月5日）は、20世紀を代表する物理化学者の一人です。ノルウェー生まれの彼は、アメリカで活躍し、不可逆過程の熱力学における画期的な研究で知られています。彼の業績は、物理化学、特に統計力学に革命的な変化をもたらしました。

オンサーガーはノルウェー工科大学を卒業後、チューリッヒ工科大学を経て、1928年にブラウン大学へ職を得ました。その後、1933年からイェール大学で教鞭を取り、1945年から1973年まで同大学の教授を務めました。彼の研究生活は、イェール大学において最も輝かしい時期を迎えました。

彼の最も重要な業績の一つは、1931年に発表された「オンサーガーの相反定理」です。この定理は、不可逆過程の熱力学における基本的な法則であり、熱力学第二法則を拡張するものです。それまで複雑で体系化されていなかった不可逆過程の熱力学に、明確で首尾一貫した理論的枠組みを与えたのです。この業績は、後の多くの研究の基礎となり、現代物理化学に多大な影響を与えました。

さらに、1944年には2次元イジング模型の厳密解を導き出しました。イジング模型は、磁性体の性質を理解するための重要なモデルであり、彼の厳密解は相転移現象の理解に大きな進歩をもたらしました。これは、統計力学における大きなブレイクスルーであり、多くの研究者を刺激し、相転移現象研究に新たな方向性を示しました。

オンサーガーの貢献は、理論物理学にとどまりません。彼は優れた教育者でもあり、多くの優秀な研究者を育成しました。彼の講義は明瞭で、深い洞察に満ちていたと伝えられています。

彼の業績は高く評価され、数々の賞を受賞しました。1953年にはランフォード賞、1958年にはローレンツメダル、1962年にはウィラード・ギブズ賞、1965年にはピーター・デバイ賞を受賞。そして1968年には、不可逆過程の熱力学における功績によりノーベル化学賞を受賞しました。同年にアメリカ国家科学賞も受賞しています。1975年には王立協会の外国人会員に選出されています。

1953年には、国際理論物理学会の招きで日本にも滞在しています。彼の来日は、日本の物理学界に大きな刺激を与えたと言われています。

オンサーガーの功績を称え、1995年にはアメリカ物理学会により「ラルス・オンサーガー賞」が創設されました。これは、物理化学における最も権威ある賞の一つです。

ラルス・オンサーガーは、その革新的な研究と教育活動を通じて、現代物理化学の基礎を築き、現在も多くの研究者たちに多大な影響を与え続けている、偉大な物理学者と言えるでしょう。彼の研究は、現代科学技術の進歩にも大きく貢献しており、その功績はこれからも高く評価され続けることでしょう。

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