ラルス・ポルセンナ

ラルス・ポルセナ：古代ローマと対峙したエトルリアの王

ラルス・ポルセナ（またはポルセナ）は、古代ローマと敵対したことで知られるエトルリアの王です。彼はエトルリア最大の都市クルシウムを支配したとされ、その存在は多くの伝説と歴史的記録によって語り継がれています。在位年代は不明確ですが、紀元前508年頃にローマとの間で戦争を起こしたとされています。

ローマとの戦い

ポルセナがローマと戦うことになった背景には、紀元前509年に王政ローマが崩壊し、最後の王ルキウス・タルクィニウス・スペルブスが亡命してきたことがありました。タルクィニウスは元々エトルリア出身であり、ポルセナに助けを求めてきました。ポルセナはこれに応じ、ローマとの戦争に突入します。

ローマ側の記録によれば、ポルセナはローマを包囲しましたが、ローマ市民の勇敢な抵抗に遭い、最終的に和平を求めました。しかし、別の説では、ポルセナはローマを実際に占領し、その後追い出されたとも言われています。いずれにせよ、タルクィニウスが王位に復帰したという記録はないため、ポルセナがローマを占領したとしても、それは自身の支配のためであり、前王朝の復興を目的としたものではなかったと考えられています。

ガイウス・ムキウスの勇気

ローマ包囲中、ガイウス・ムキウスという若いローマ人がポルセナを暗殺しようと単身でエトルリア陣に潜入しました。彼は王を狙ったものの、王と間違えて書記官を殺害してしまいます。捕らえられたムキウスは、ポルセナの前で自身の身分と決意を堂々と語り、さらに自らの右手を炎に焼かれるという壮絶な行為に出ました。この勇気に感銘を受けたポルセナはムキウスを解放し、その直後にローマと和平を結んだとされています。この事件から、ムキウスは「スカエウォラ（左手）」というあだ名で呼ばれるようになりました。

クロエリアの脱出

和平条約において、ポルセナはローマがウェイイから奪っていた領土の返還を求め、代わりに人質を取りました。その一人、クロエリアという若い女性は、他の人質たちを率いてティベリス川を渡ってエトルリア陣から逃げ出しました。ポルセナは怒りましたが、後に彼女の安全を約束し、ローマも彼女を返しました。クロエリアの勇気を称え、ポルセナは彼女に人質の中から好きな人を選んで解放する権利を与え、彼女は若い男性全員を選びました。ローマでは、彼女の像が立てられ、その功績を称えました。

ポルセナの贈り物と和平

歴史家リウィウスによると、ポルセナがローマを去る際に、困窮していたローマ市民に兵糧を贈ったことが、その後のローマでの公的オークションの起源になったとされています。紀元前507年、ポルセナは再びタルクィニウスの復位をローマに要求しましたが、ローマの使者はこれを拒否し、タルクィニウスを他の場所に亡命させるよう求めました。ポルセナはこれに応じ、ローマとの間に確固たる和平が結ばれたとされています。

アリキアとの戦い

紀元前508年、ポルセナは息子アルンスに一部の軍勢を与え、ラティウム同盟のアリキアを包囲させました。しかし、アリキアは同盟とマグナ・グラエキアの都市クーマエの援軍を得て、クルシウム軍を打ち破りました。敗れたクルシウム兵の中には、ローマに逃れ住み着いた者もおり、彼らが住んだ地域は後にトゥスクス区と呼ばれるようになりました。

墓と遺産

ポルセナは、自身の支配した都市の中（あるいは地下）にある壮大な墓に埋葬されたとされています。その墓は高さ15メートル、長さ90メートルの長方形をしており、角錐や巨大な鐘で飾られていたと言われています。しかし、ポルセナの墓は、紀元前89年にコルネリウス・スッラによって破壊されました。キウージでは、「ポルセンナの迷宮」と呼ばれる遺跡が発見されており、これが墓の一部ではないかと考えられています。

フィクションにおけるポルセナ

ポルセナとローマの人質クロエリアの物語は、ピエトロ・メタスタージオのオペラ『クレリアの勝利』や、マドレーヌ・ド・スキュデリの小説『クレリ』の題材となりました。また、トーマス・マコーリーの『古代ローマ詩歌集』では、ホラティウス・コクレスがポルセナ率いるエトルリア軍と戦った伝説が歌われています。

まとめ

ラルス・ポルセナは、古代ローマと対立したエトルリアの王であり、その生涯は伝説と史実が入り混じった複雑なものです。彼のローマとの戦いは、多くの英雄的な物語を生み出し、後世に語り継がれています。ポルセナの人物像は、その勇猛さと時に寛大な面を併せ持ち、古代ローマ史において重要な役割を果たしました。

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