ラングHS.30歩兵戦闘車

HS.30歩兵戦闘車ラング

HS.30歩兵戦闘車ラング（ドイツ語: Schützenpanzer Lang HS.30）は、1950年代に西ドイツのために開発された歩兵戦闘車です。制式名は「SPz.12-3（歩兵戦闘車12-3型）ラング」として、西ドイツ陸軍に配備されました。この車両は、その名の通り長い車体を持つことから「ラング」と呼ばれ、同時期に開発された短い車体のSPz 11-2装甲偵察車クルツと区別されます。

ラングは、スイスのイスパノ・スイザ社によって開発され、そのエンジンはロールス・ロイス製を用いています。この車両は、当時の装甲兵員輸送車としては強力な20mm機関砲を装備しており、対戦車戦闘能力が高いことで知られています。当初、1万輌の調達が計画されていましたが、様々な問題により生産は2000輌に制限されました。

背景

新しいドイツ連邦軍は、アメリカ製の戦車（M47パットンやM41軽戦車など）や、主に輸送目的の装甲車（M113）を導入していました。しかし、彼らは従来の戦車と連携し、乗車戦闘が可能な装甲車両を求めていました。このニーズに応じて、ラング歩兵戦闘車が開発されたのです。ドイツ連邦軍は、分隊の戦闘装備の一部としてこの車両を位置づけ、兵士たちはこの車両と共に攻防両方の訓練に励みました。

特徴

ラング歩兵戦闘車は、敵の軽装甲車や対戦車兵器に対処するため設計されており、これにより主力戦車は対戦車戦闘に集中できます。小型の砲塔が特徴で、ここには当時としては強力な20mm機関砲を備えています。この車両は、M113よりも約60cm低い車高を実現しており、戦場での姿勢の低さは有利に働きました。

浮行能力がなかったものの、これはドイツ連邦軍の戦略において致命的な欠陥とは見なされませんでした。乗車には2000発の20mm弾薬が車載され、戦闘時における持続力を確保しました。強化された正面装甲は20mm弾を防ぐことが可能でしたが、その分、重量はM113よりも2トン以上増え、収容可能者は5名と、非常に限られていました。また、上面ハッチは乗車戦闘を可能にするために観音開きで、大きく開けられる反面、NBC（核・生物・化学）兵器に対する防護が不十分でした。

運用

短い開発期間とメーカーの経験不足が、ラング歩兵戦闘車において初期の整備トラブルを引き起こしました。エンジンや冷却装置、操行装置、サスペンション等に問題が生じ、これらは1960年代半ばまでに改善されました。しかし、これらの問題は甚大であり、結果として多くの軍の士官がこの車両を任務には適していないと見なしました。

一方で、最初のラング歩兵戦闘車は1958年に配備され、1971年まで現役でした。その後も予備装備として80年代まで保持され、一部はペルーへ輸出されました。

スキャンダル

ラングの初期の機械的問題は、予算計画にも疑念を生じさせました。特に、計画よりも遥かに多い1万輌の発注は、フランクフルター・ルンドゥシャウ紙による調査で明るみに出た主要人物による賄賂や、政府が関与する金銭の流れから問題視されました。

バリエーション

ラングは、用途によっていくつかのバリエーションが存在します。例えば、通常の歩兵戦闘車の「Schützenpanzer lang, Gruppe」や、装甲指揮車の「Schützenpanzer lang, FüFu」、自走対戦車砲の「Schützenpanzer lang, LGS M40A1」などがあります。これらのバリエーションは、それぞれ異なる役割を持っています。

HS.30歩兵戦闘車ラングは、その技術的な特長や運用における困難を通じて、ドイツ連邦軍の装甲部隊に重要な影響を与えました。この車両は、戦略の変化や装備の進化を象徴する一例です。

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