ランス (槍)

ランス (Lance)

ランスは、中世から近代にかけて主にヨーロッパの騎兵が使用した槍の一種です。ラテン語の「lancea」（槍の意味）が語源で、日本語では「騎槍」と訳されます。

戦場での実戦だけでなく、馬上槍試合においても重要な役割を果たしました。兜、鎧、剣、メイス、盾と並び、ランスは騎士を象徴する装備の一つとして認識されています。ファンタジー作品では、細長い円錐形にヴァンプレイトと呼ばれる大きな笠状の鍔がついた形状で描かれることが多いですが、全てのランスがこの形状であるわけではありません。

ランスの戦闘方法

ランスと他の槍との最大の違いは、刃物がついていない点にあります。棒の先端が尖っているか、円錐型をしており、敵を突き刺すことに特化しています（先端の形状は国によって異なります）。

長さも特徴的で、一般的な片手武器としては非常に長く、4～5メートルを超えるものも存在します（扱いやすさを考慮した一般的なランスは2メートル前後）。接近戦を考慮した武具であり、鍔が付いているものが多く（鍔の代わりに溝が設けられている場合もあります）、柄を含め全体が頑丈な鉄で作られていることが一般的です。ただし、人間が扱うため、太さは腕よりも細く設計されています。

ランスが長くなった背景には、槍衾を形成する槍兵への対抗策がありました。しかし、槍兵もより長いパイクを使用するようになり、結果としてランスは長大化の一途をたどりました。

ランスは通常、馬具に取り付けられた専用のホルスターに先端を上に向けて収納され、先端には旗が取り付けられていることもあります。

振り回すには適さない形状のため、馬上からすれ違いざまに敵を突き刺すのが基本的な戦法です。馬の走力を利用することで、強固な鎧を貫通することも可能であり、重装備の敵に対して効果を発揮します。しかし、その長さと重さから、乱戦には不向きであり、刀剣などの別の武器を携行するのが一般的でした。広義のランスは比較的短く、刃も付いていたため、ある程度の白兵戦も可能でしたが、それでも通常の槍ほど短くはなく、突撃の威力と衝撃への耐性を高めるために重く頑丈に作られていたため、乱戦では不利であることに変わりはありませんでした。鎧には、ランスを乗せるための「ランスレスト」と呼ばれる引っ掛けパーツが取り付けられている場合もあります。

ランスは一見すると扱いやすい武器に見えますが、実際には刀剣よりも重く、揺れる馬上から正確に敵を狙い、突きの衝撃に耐える必要があり、熟練した技術と体力が必要とされます。

競技用のランス

馬上槍試合で使用されるランスは、相手に当たった際の衝撃で折れるように作られています。また、突き刺さりにくいように工夫が凝らされており、「コロネル」と呼ばれる先端が三叉に分かれた王冠状の穂先が用いられることもあります。

ドン・キホーテの槍

セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』には、主人公がランスを持って風車に突撃する有名なシーンがあります。原文では、この際に使用された武器が「Lance」と記述されており、映画や演劇などの小道具もランスの形状で作られることが多いです。

関連項目

槍騎兵
騎兵
槍
中世
ヨーロッパ
ドン・キホーテ
ROCK YOU! - 馬上槍試合を描いた映画
香車 - 将棋の駒（英語訳がlance）

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