香車

香車：将棋における独特の駒

香車（きょうしゃ）は、将棋において独特の動きと戦略的役割を持つ駒です。本将棋をはじめ、平安将棋、中[[将棋]]、大[[将棋]]など、様々な将棋変種に存在し、その存在感は古くから認められています。英語ではlance（槍）と訳され、その名の通り、前方に長く伸びる効きが特徴です。

香車の動きと役割

香車は、縦方向に何マスでも進むことができますが、横や斜めには動きません。このため、槍を思わせる直進性の高い動きが、その名の由来となっています。序盤では、初期配置のまま相手の攻めを牽制する役割を担うことが多いですが、中盤以降は、持ち駒として真価を発揮します。

香車の主な役割：

歩兵の代用: 歩兵が不足している状況で、垂れ歩のような役割を担います。
飛車の代用: 縦方向の効きで、相手の駒の動きを制限します。詰将棋においても、香車は敵の駒の行動範囲を狭めるために効果的に用いられます。
両取りの仕掛け: 田楽刺しなど、複数の敵駒を同時に取ることができる状況を作り出すことができます。
玉将の囲い込み: 玉将の逃げ道を封鎖し、詰みに繋げる役割を担います。

香車の効力は、盤上の配置や状況によって大きく変動します。「下段の香に力あり」という格言は、下段から打つ香車が、両取りや玉将の封鎖に有効であることを示しています。また、「歩切れの香は角以上」という格言は、相手が歩切れの状況下において、香車が角行以上に重要な役割を果たすことを示しています。

成香と不成

香車は成ると金将になります。金将と同じく6方向に動けるようになりますが、1手で2マス以上前進することはできなくなります。敵陣3段目では不成で使うことが多く、敵陣2段目での不成は、打ち歩詰めなどの特殊な状況下でのみ有効となります。

香車と戦法

「手のない時は端歩を突け」という格言は、香車を効果的に使うためには、端歩を突いてその下段に香車を配置する準備をする必要があることを示しています。対矢倉戦法などのいくつかの戦法では、香車が攻撃の中心を担う重要な役割を果たします。

香車の起源と類似駒

香車は、歩兵の上位バージョンというよりも、古代インドのチャトランガにおける車に相当する駒と考えられています。チェス、シャンチー、チャンギなど、多くの将棋系ゲームにおいて、香車に相当する駒が、盤の左右奥隅に配置されています。北宋時代のシャンチーでは、香車と全く同じ動きをする車が存在したと言われています。

香車の物理的特徴

香車は、桂馬とほぼ同じ高さですが、幅がかなり狭く作られています。

香車と安産祈願

香車は、一直線に進むことから、安産祈願の対象として信仰されています。特に輪王寺では、寺内の観音堂（産の宮、通称香車堂）に多くの香車が安置され、妊娠した女性が安産祈願のために詣で、無事出産後に新しい香車を奉納する習わしがあります。これは、産道を真っ直ぐ進み、将来は金将（金銭的な豊かさ）となるようにという思いが込められています。

参考文献

梅林勲・岡野伸共著『改訂版 世界の将棋・古代から現代まで』（将棋天国社、2000年）
二上達也著 『強くなる将棋入門』（学習研究社）

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