ランチア・アプリリア

アプリリア（Aprilia）: 革新的なイタリアン・コンパクトカー

アプリリアは、1937年から1949年にかけてイタリアの自動車メーカー・ランチアによって生産された小型乗用車です。この車は、創業者であり天才エンジニアのヴィンチェンツォ・ランチアが1937年に亡くなる際、彼の革新的な思想の集大成として生まれました。アプリリアは、当時の自動車技術において先駆的な要素が散りばめられたモデルと言えます。

設計の革新

アプリリアは、当時としては最先端のフル・モノコック構造を採用しており、軽量化と強度を両立させています。また、流行していた観音開きのピラーレス構造が採用され、デザイン面でも未来的な印象を与えました。アプリリアのデザインは、カロッツェリア・ピニンファリーナの創業者であるバッティスタ・ファリーナとトリノ工科大学の共同作業によって風洞実験が行われ、空気抵抗係数（Cd）0.47は第二次世界大戦前の市販型乗用車として非常に優れた数字とされています。これにより、アプリリアはエアロダイナミクスに優れた車両となりました。

サスペンションとエンジン

フロントサスペンションには、1922年に初めて登場したラムダ式のスライディングピラーを採用し、リアにはスウィングアクスル式の四輪独立懸架を取り入れることで、扱いやすさと走行性能を向上させました。エンジンもラムダと同様に、狭角V型4気筒エンジンが搭載され、そのシリンダーヘッドはオリジナルのSOHC構造を備えています。

モデルの変遷

アプリリアは、数回のモデル変更を経て、初期型は形式名238でわずか1,352cc、47馬力を発揮していました。このモデルは1937年から1939年の間に10,354台が生産されました。1939年にはエンジンの排気量が1,486ccに拡大され、形式名438に改名されました。この新モデルは1949年までに9,728台が製造されました。また、デラックス版「ルッソ」やロングホイールベース版「ルンゴ」も生産されました。これらのモデルに加え、特注のボディを架装するためのシャシーが7,554台製作され、ピニンファリーナの代表的な作品となる「ベルリネッタ・アエロディナミーカ」などが誕生しました。さらに、フランスでも約700台のアプリリアが生産されました。

日本への輸入

アプリリアは、発売当初の日本においても注目されていました。イタリアがムッソリーニ支配下にあったため、イタリア車の輸入は盛んであり、アプリリアも数台が日本に上陸しました。戦後の1950年代末まで数台が正常に走り続けており、一台はオープンボディとして流通し、後に廃車された際にはそのエンジンがオートレース用のマシンに再利用されたとされています。

まとめ

アプリリアは、その革新的で個性的なデザイン、優れた技術を備えた小型高級車として、イタリアの自動車史に名を刻む存在となっています。特に、デザインだけでなく走行性能や快適性においても高い評価を得ており、スポーツサルーンとして愛好者たちに親しまれています。

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